私にはもう実家はない。
私が帰るところは今の家しかない。
私を守ってくれた家族はもういない。
母の部屋にあった本棚を、今の家ヴィンチの丘の家まで運んできた。
思い出や記憶、そして小さなおもちゃが詰っている。
この扉を開けるとゴチャゴチャしてて、いつでもうわ~と胸がふくらむ。
幼少時に返らせてくれる「おかえり棚」である。
誰にでもこんな頃はある。
凡人も天才も。
善人も悪人も。
どうしてこんな物を持っているのか、どこで見つけたのか、誰のものだったのか、記憶にはない。
でも、赤ん坊の頃の写真を見ると、似たような物が置いてある。
これだって記憶にはない。
しかし、実家にあったのだから、誰も捨てられなかった一品なのであろう。
きっと、母の記憶の品なのかもしれない。
それらこれらをギュッと詰めた棚。
記憶の品というかたみを詰めた棚。
もしかしてもしかすると、家具つくりが趣味だった祖父の作品かもしれない棚。
もう問うことはできない。祖母さえもいない。
記憶と想いを詰めた棚。
少年もこの扉を開けるとワクワクする。
そうっと、大切に。
今日も開けてみよっか、母の命日に。
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