二年前の五月、オリーブの莟の頃

私は三週間手術入院した。

イタリアで三週間の入院は長い。

一週間で退院といわれていた手術入院であったが

三週間と長引いてしまった。

あの時私は一人で白い箱の部屋で苦痛と退屈な日々を過ごした。

それでも毎日夫が顔を出してくれた。

あったら嬉しい物を運んでくれたり、家の様子を報告したり

顔を見るだけでも、気分転換になった。

我が少年は、学校行事が忙しかったり、宿題に追われたり

スポーツに行ったり、TVに夢中で、時々しか訪れなかったけど

寝たっきりの母は体力不足で声を出す力も失っていたので

案外気を使ってくれていたのかもしれない。

初期にリセットされたのかな、赤ちゃんに戻ったように

起き上がるリハビリから始まって、歩くリハビリ。

ベットでゴロゴロしていると動けなくなると焦り

できる限り立っていたし歩いていた記憶がある。

休憩に入院後半本を読みまくって、内容に涙していたこともあった。

ある日、少年が訪れた時、リハビリ中で起立していた母を見て

泣きついてきた十歳の少年の姿も覚えている。

・ 記憶を記録の記事 ・


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そして今、またほんの少しの間、家族と離れる。

今度は、私の意志で。

友人たちもみんなやってるから、私もできるんじゃないかと

挑戦的な気持ちで出発する。

家の中私一人で殺気立っている。

友人たちはそれでも向こうから仕事やなんやで呼びよせられて

家族を置いて一人出発しているのだが

私の場合は、私の希望で一人で出発する。

そういうわけで、入院以外、私は一人で過ごすことがない。

常に家族と一緒で、常に家族のことを考え

常に家族をサポートしてきた。

家族を一番に考え、仕事の選択も家族を優先してきた。

友人と外出することもなければ、夫婦で外出することもほぼない。

義父母がいたら・・とフリーを想像してみるがあまり浮かんでこない。

少年がイタリアの中学生となって、学校への送迎義務が終了し

私は、万歳をしたほど嬉しかった。

この送迎義務が、フリーになりきれない難点だったように振り返る。

今は、自分で朝登校し、昼に一人で帰宅する。

ヴィンチ村でイベントがあれば一人で行けるし

図書館も一人で行けるようになった。

日本では当たり前の話で驚くであろうが

イタリアでは、それでもまだ14歳未満の未成年は

一人で行動すると、民衆の目を引く。

お昼ご飯は、用意してあるお皿を温めてペロリと食べているし

おやつも勝手に多めに食べているw

サッカークラブへは有料でお迎えが来て、帰りだけ迎えにいく。

少年はタブレット、夫もスマフォデビューを果たし

三人でグループチャットができれば、距離はさほど感じないであろう。

家の人は、母国で羽を伸ばすだけである。

人生の中のちょっとの期間ではないか。

できる、できる、と言い聞かせ、家族で初体験に挑むのである。


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ブドウの目掻き作業が一段落し、ホッとしている。

ワインのボトル詰めが出発前に控えているが、もう慣れたものだ。

農主の新規のお客様は大量発注して下さった。

ボトル詰めトラックを呼んで、はりきってのご対応。嬉しそうだ。

私も、お手伝いができて光栄である。

しかし、この五月、雨模様の寒い天気が続く。

芽が出る頃、花が咲く頃、結実する頃、熟す頃

実りの天気というのはとっても肝心で

その時期の天気で実の状態が決まる。

オリーブの芽は出て莟もあるが、この寒さで莟は小さいままだ。

実の芽も出てこなかった木がある。葉の芽は元気がいい。

オリーブの花は、5月の24日前後頃開花する。

開花までに膨らみ始めるところが膨らんでいない。

開花を見届けずに離れるのは寂しい。心配が募る。

そして、雨が続くと大地が乾かない。

大地の表面ではなく、地下である。

それでもトマトを大地に独り立ちさせた。

トマトを簡易ハウスで育てても、成長が遅い。

小さいのもあるが、自然農法の耕さない畝に植えた。

刈り込んだ草の嵩に埋もれて、まだ支え棒は必要ない。

大地に植えるときは、なるべく土が乾いた状態がいいが

仕方がない、濡れた土に植えることにした。

シソとペペロンチーノは鉢替えしたいが、全然大きくないので

必要がない。困ったな。

夫は草刈に追われている。私が土いじり係りであった。

やはり、二人で手分けして育てていかないと一人では無理だな。

強行シングル里帰りの無理がだんだん見えてきた。


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しかし一度決めたことだ、決行しようじゃないか。

動いてみないとわからないことはたくさんある。

動いてみて問題に気が付くことだってある。

じっとしていたら知らないまま過ぎていくのは勿体無い。

一人という時間を家族が必要なときに味わってみたいのだ。

私にも少年にも夫にもリセットされるような気がしてならない。

なんとかなる。

どこまでなんとかなるのか見当付かないが

心配ばかりしていたら行動ができなくなる。

開き直って、家の人が国の人になるだけのことを

それぞれに体験したいと思う。


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母国では、地球と体に優しい暮らしを伝えられればと願う。

イタリアより断然化学の国ニッポン。

イタリアは色んなことに機能しないけど、正直だと思う。

ニッポンは便利だけど、知らなければいけないことが見えないと思う。

私の小さな頭脳でも、イタリア田舎暮らしと

私のニッポンを同時進行させながら生きる今を

語れたらな、なんて想像しながら

ワイン&オリーブオイル会で披露するオリーブオイルの試飲をした。

そうこうしている内に、私のオリーブの木が

プレート用にスライスされてきた。いい香りだ。木目も最高。

私の生きる今のホンモノの香りを届けられそうだ。




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