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・ つづき ・
差し出された透明傘とコンビニの超軽量傘をさしながら
大粒の雨の中、歴史あるお醤油の蔵ヤマロク醤油を訪ねた。
雨だから外には誰もいない。
「すみませーん、観光客でーす!」
と私が大声を出すと少年は嫌がる。母は気にしないw
ここまで来て閉まってるなんて悔しいじゃないっ。
「あ、いらっしゃいませー」
よかった・・、誰かいた。
わざわざ来るんだから蔵を見たいに決まっている、のであろうか
早速、見学案内して下さった。
見学の前に一つ。
服に着いている菌を落としてくれ、という。
なんだか本格的になってきたぞ。
どうしてここに来たのか尋ねられた。
なぜなら、ここ数年立て続けにTVで取材されまくって
イギリスのBBC局まで取材をしに来られたそうだ。
その後、一度見てみようと訪問されるお客様が
後を絶たないのだそう。生産も追いつかないそうだ。
ヤマロク醤油のもろみ蔵は100年以上前に建てられ
国の登録有形文化財に指定されている。
その時からの梁や土壁には酵母菌や乳酸菌たちが暮らしていて
そんな蔵の杉桶も醤油造りに欠かせない菌たちがいて
成り立っているのだそう。生きる菌の音まで聞こえるそうw
だから訪問者が連れてくる菌に気をつけているそうだ。
醤油造りに必要のない菌が生まれると
また違うものになってしまうのは、納豆等も同じであろう。
蔵の中の桶の上を歩かせてもらったが
確かに微生物の生命力のようなものを感じぞっとした。
醤油をつくるのは職人ではない、蔵と桶の菌だという。
その微生物の力は、なんだかワインにも似ているようにも思えた。
ビオディナミワインを造る農主も似たようなことを言っていた。
私たちはブドウに手を貸すだけだと。
私は専ら大地を歩く助っ人で
知識と腕と力を要する蔵の造酒はなかなか勉強不足だが
それでもブドウをそのまんま収穫して
発酵させて熟成させて
安全に果実を酒にするのだから
果皮のちからやそのものにくっついてきた・・生まれた菌のちからは
未知の世界で神秘な世界なのである。
見えないものに魅了されると
時間と経験とそして私たちがもつパッションで
その見えない世界たちと交信できると私は信じている。
彼らも自然の力で威力を発揮し
私たちも私たちがもってうまれた六感を発揮すれば
双方の力で、美しい味が生まれ、食が豊かになると信じている。
逆を言えば、添加物で調合しなくても、美味は生まれるのである。

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現在、100~150年はもってしまう桶の
桶作り職人がいなくなることに危機を感じ
次世に承継させる木桶職人プロジェクトを呼びかけている。

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蔵の様子を説明してくれた見えない世界に魅了された従業員は
千葉県出身の方でこれまた意気投合した。
少量生産なのに需要が増えてしまったせいで醤油は品薄だった。
仕方なく小瓶で数本ずつ
あっさりした口当たりに後で甘味を残す煮込みに最適な醤油と
二年熟成させた醤油でさらに仕込まれ熟成された
濃厚でまろやかなかけ醤油に最適な醤油をゲットした。重い・・・。

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帰り方などを質問していると、土地に詳しいという従業員の方が
顔を出してくれた。この方もなんと東京からの移住者。
帰り方どころか、小豆島の歩き方をいっぱい教えてくれた!
オススメランチ、オススメディナー、オススメジェラート
オススメそうめん工場、オススメ佃煮工場etc.。
「わー、明日早速行ってみます!!!」

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まだまだ雨が降る小豆島。
開き直って親子は雨の中を歩く。
すると、「乗っていきなさい。」と女性が車から声をかけてくれた。
「え、え・・・」
「いいから、いいから。私もヤマロクの従業員よ。」
「えー、ありがとうございますー!」
彼女は島民だそうだ。車中おしゃべりに花が咲く。
徒歩とバスじゃぁ何時間もかかるのに
やたらと帰途が短く、おしゃべりの時間もあっという間に過ぎていった。
なんだか不思議だなぁ、小豆島って。
向こうから助けの手を差し伸べてくれる。

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東京からの移住者Sさんの小豆島コースを歩いてみよう。
宿舎に戻って、佃煮工場にメールでアポをとる。
佃煮屋さん、いい人そうだ。
心配して行き方や時間をいろいろ考えて下さった。

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やっぱりいい人だった。
私と少年の訪問のために
昆布の佃煮を一から拵えてくれていたのである。
こちらの佃煮は、ヤマロクさんの煮込みに最適なお醤油を
使っているそうで、佃煮まで生きる菌が乗り込みそうな勢いだ。
薄暗い工場のその醤油で煮込んでる釜から出る湯気は
それもまた生きる湯気に見えて仕方がなかった。
ちょっと早く着いてしまった。
小豆島食品の主は、私たちが着いた頃に佃煮が仕上がって
ホカホカを試食!という計らいだったそうだ。
「私たち、何時間でもいますっ!」
なんというご縁なのであろう・・・ 佃煮を見学していると
ヤマロクさんの東京からの移住者Sさんがやってきた。
「うわー、もう一度会いたいと思ってたんですー!!!」
またおしゃべりに花が咲いた。
Sさんは、マイ瓶持参で佃煮を調達しに来たそうだ。
っもう、美味しすぎて、ご飯がすすんじゃうんだそう。
こちらの小豆島食品の佃煮は原材料にもこだわり
その原材料がもつ旨味を十分に引き出した
シンプルさが美味を生んだ佃煮なのである。
昆布で出しをとり、ヤマロクさんのお醤油で汁をつくり
ビッグカットな鰹節をどっさり加え、千切りの昆布を加え
無漂白の砂糖を加え、ひたすらかき混ぜるのである。
かき混ぜるところを体験させてもらったが
材料の濃厚さに、重いのなんの。これ毎日やってるのー?!

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主がかき混ぜている間、Sさんは近所の麹所の味噌を
調達しに行くということで、これはおもしろい!
私たちもくっついて行ったw
作業はしていなかったが、工場を見学し、お話を伺った。
この麹屋さんで、生味噌を三種ゲット。
スーパーの味噌は、発酵止をしているので
冷蔵庫に仕舞う必要はないのだそう。
しかし、生味噌は、発酵し続けているから
低温なところに置いておくことで、発酵進度が遅くなるのだそう。
ということは、生味噌は生きているのかっ!

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東京から移住してきたSさん、小豆島に恋している。
小さい島なようで何でも揃ってて不便はないそう。
「ネットでお買い物しても翌日着くんだよ!」ワオ
とにかく島の人々が優しくって人間味があって
この暮らしを味わってしまうと東京に帰れない、と。
玄関には、ご近所さんから野菜の差し入れがあるそう。
何も言わなくても、向こうから親切を運んできてくれる、という。
あぁ、傘のおばちゃんのことだ・・・

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私たちは、出来たてホヤホヤの佃煮の試食会を始めた。
この昆布の佃煮は、生卵ご飯と食べるために作った佃煮。
アツアツのご飯に
ホヤホヤのたまこまめごはん佃煮をたっぷりのせて軽く混ぜ
島の放し飼いのニワトリさんのプリップリ卵を落としてかき混ぜる。
別口でお醤油を足すのではなく、この甘辛い佃煮で嗜むのである。
こんなに美味しい生卵ご飯食べたことないっ!
本当だったら、3回ぐらいお代わりしたいw
ということで、佃煮をイタリアへお土産にして
イタリアで再現することにした。すぐ終わっちゃうよ。

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Sさん、ありがとう。
私は海外移住者だけど、国内移住者と気分は同じだと思う。
移住先の住人の受け入れ方と移住者の表現で
全然暮らし具合は変わってくるのはこういうことだ。
Sさんは、島から頂いた親切をこうやって
私みたいな旅人に親切を分け合っている。
みんながいい気持ちになって、なんて素敵なことなんだろう。
私もどこかで親切を分けたい。
それは日常の中だって、家族だっていいはずだ。
とっても大切なことをこの島で知って、私は来た甲斐があった。


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