”Scacchiatura”スカッキアトゥーラという単語でGoogle検索すると、トマトのわき芽の除去作業がTop10に並ぶ。
Potatura Seccaポタトゥーラ セッカが冬のメインの剪定だとしたら、Potatura Verdeポタトゥーラ ヴェルデは芽が出て成長が止まる頃までの作業のことをいう。直訳すると緑の剪定という意。直訳の方がわかりやすいかもしれない。
ブドウの木のPotatura Verdeポタトゥーラ ヴェルデと呼ばれる作業の期間にはいくつかある。
①Scacchiaturaスカッキアトゥーラ むだ芽除去作業=芽掻き
②Allacciaturaアッラッチャトゥーラ 棚の架線に縛ってあげる作業=誘引
③Sfemminellaturaスフェンミネッラトゥーラ 二番芽除去作業=副梢掻き
④Cimaturaチマトゥーラ 一番上の架線を超えた枝を処理する作業=摘心
その①番のScacchiaturaスカッキアトゥーラ(芽掻き)は、葡萄酒の質を良くするためにする。量より質である。
実が成る枝でも、位置的に邪魔であったり混み合っていたり下向きだったり・・・する枝は、残念ながら除去する。
ピョコピョコ実の成らない今年生まれた芽たちも栄養を吸い取ってしまうので、取り除く。
しかし、位置的に来年・再来年に使えそうな枝は今年実がつかなくても残しておく。その枝から芽の出る2年後の実に期待するのだ。
未来のことを考えずに全部除去してしまうと、適した形に留めることができなかったりする。(ブログ『ブドウの木の剪定Potatura delle Viti』)
本来実の成る枝たちが、バランス良くそして未来の枝たちも残されたブドウの木は、病気になりにくく、適した樹形を保ち、質の良いブドウをつくりだす。
味だけではない。葡萄酒において大切な果実の皮の要素を十分に確保できる。
特に農薬を使わないBIOビオ(Biologicoビオロージコの略=オーガニック)で栽培している農園は、こういうところに手間隙かけているはずである。
放ったらかしがBIOなのではない。
Metodo Biodinamicoメートド ビオディナーミコ(バイオダイナミック農法)に従う農園は、Scacchiaturaスカッキアトゥーラ(芽掻き)も4月5月のLuna Discendenteルーナ ディシェンデンテ(約28日間のサイクルをする回帰運動中、天体の赤道から見て月が秋分点(下降)側の約14日間)に作業を行う。
この期間は、エネルギーが地下で活動するので、地上での作業・・特に剪定など植物に傷を伴う作業は、地上のエネルギー活動が少ない期間に行うことで、植物の傷への負担を少なくさせるという考えだ。
いやいや、人間だって同じことが言える。イタリアだったらどのカレンダーにも月のマークが記されている。我々の眼でも見える新月・上弦・満月・下弦の4つを参考にしながら活動するだけでも、いつの日か私たちの体調の違いに気が付くはずだ。
話は逸れたが、ポキポキ折れるピチピチ潤った生まれたばかりの枝は手でも折れるが、傷口を滑らかにするため、ちょっと大きい枝は先の尖ったハサミで切り取る。
根元のSelvaticoセルヴァーティコ(野生)の若芽たちも取り除く。
さらに・・・邪魔な草や畑の横にある大きな木の根が繁殖して生まれた若木も、我々の手でハサミを変えて取り除いてあげる。
どの作業も大変だが、ブドウの木の調和を”感”を使って仕上げるScacchiaturaは好きだ。
私がブドウの木に向かっている向こうでは少年がSovescioソヴェーショ(緑肥)のPiselliピゼッリ(えんどう豆=グリーンピース)をおやつ代わりに食べている。
実は小さいがプチプチと甘味があって美味しい。欲張って大きそうな実を食べると苦味がある。少年も気が付いたようだ。
そら豆は、その頃まだ実になっていなかった。花が咲いておりハチがたくさんいた。耳を澄ますとハチの音。
てんとう虫もたくさんいた。てんとう虫を見るとなぜかホッとする。
そして、所々に穴を見つけた。
Cacciatoreカッチャトーレ(狩人)と言ってもイノシシのみ狩をする農主が教えてくれた。
あの穴はイノシシの仕業で、たまにBietolaビエトラ(ふだん草)と間違えるような大きな緑色の葉を持ち一枚の花びらで黄色い柱の雌しべを持つ植物の根を食べるそうなのだ。
へぇぇぇ。
虫や動物の集まるブドウ畑。
春の音や色を見ながら聞きながらのScacchiaturaは気持ちがいい。
今年は、変な日焼けをしないよう、長袖シャツに襟を立てて。