大地の住人 ヴィンチの丘で

地球と体に優しいコト ~イタリアから~

フィレンツェの端っこレオナルド・ダ・ヴィンチのふるさとヴィンチの丘に在住。 大地の自然たちと向き合って地球と体に優しい様々なコト、発見・提案・発信!

タグ:Legare

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ブドウの枝からポタポタと涙が溢れていた。

こみあげるように、ふるいおこすように。

向こうではミモザが色を変えている。

菜の花は場所によっては種になりかけていた。

半袖になりたくなるほど体がほてる日もあった。



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春が近づくと、ブドウの木の樹液が流動しはじめ

剪定した切り口から樹液がこぼれる。

その現象をイタリア語でPiantoピアントという。

このピアントがはじまる頃、Legaturaレガトウーラという

一番下の架線や柱棒に縛り付ける作業をする。

これをきちっとすることで、芽が出て成長するときに

まっすぐ上へ上へと伸びることができる。

ピアントがまだ全部にはじまる間、新しいブドウ畑の

小さなブドウたちのレガトゥーラをすることにした。

彼女たちはまだまだ体を曲げることはない。

姿勢正しく生きるよう道標を私たちがつくってあげるのである。

その後、まっすぐ生きる者もいれば、クネクネとすねる者もいる。

まったく人間と同じだ。



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小さなブドウの木を相手にすると、しゃがみこまなくてはいけない。

張り切って一日目はなんてこともなかったが

二日目は、筋肉痛がはじまった・・。うぅ、辛い。

しかもマウンテンバイク風シティバイクの、ギアがきかない

自転車をこいでみるとわかる若干坂道を

体が熱くなるほどにこぎきった後のうさぎ跳びは厳しい。

「私、坂道に動悸を覚えるよ。」

「マキ、日々の筋トレが必要だ!」 まぁね。

「毎日走ったり歩いたりさ、自転車乗りまくったりして

体を鍛えるんだ!」 そうは言うけど・・。

農主と、年を取れば取るほど体を鍛えなくてはいけない

そう納得させるエピソードを話し合った。不吉だねぇ。

「農業なんてちっとも運動のうちに入ってない!」 あら。

確かに動かすところが違うし、持久力を鍛えるにはまたちょっと違う。

デスクワークの人よりは無意識にでも動かなくてはいけないが

あくまでも作業であって運動ではない。

井戸端会議にならぬよう、自転車通勤にかけてみようと思う。

少年がサッカーの練習に日々掛けているように

農民も農作業期のために、日々体を鍛えなくてはならない!



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あーだこーだ体調を心配している割には水を飲まない農主。

私は、水を飲むことは大切だと病気になるたびに思うから

IKEAでテルモスの水筒を買って

日本からのお土産、殺菌効果のある緑茶をぬるめに

ブドウの木の柱にぶら下げておく。

しかし、列を往復しないと口にすることができないので

ウエストポーチにも小さな水を持ち歩く。

この水は、飲む用と緊急時用。

腰にはベルトに2種類の紐と縛り付ける道具と剪定用はさみ

プラス、携帯電話や身分証明書、小型カメラにそのミニ水筒

ティッシュや絆創膏などがごちゃごちゃ詰まったウエストポーチを巻く。

重いけど、どれも必要な道具なのである。



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「今日のお昼のニュース見た?」

「まだ見てないけど。」 畑にいたし・・。 

農主はミラノのワイン見本市イベントに参加するそうだ。

参加するか悩んでる、という。

はじめて娘をミラノのイベントに連れて行く予定だったそうで

嬉しさと残念さがまだ半々だった頃。

こういったイベントは、口にするものもあれば

はじめましてやありがとうの握手は必須だ。

イタリア文化はスキンシップが現在天敵となってしまう。

少年のヴィンチの国立中学校も指令が出た。

3月15日まで遠足等の遠出を禁止されてしまったのだ。

まさしくも遠足シーズン、交換学習シーズン、コンテストシーズンで

子どもたちは踏んだり蹴ったりである。

少年に 「遠足だった日は何するの?」

悔しそうに 「いっぱいテスト・・・。」 あぁ、可哀想に。

カーニバル最終日は友たち恒例の村集合には参加して

時間を思春期らしく無駄に過ごしていた。無駄が思い出なんだ!

農主もワイン見本市イベントは中止されたそうだ。

なんてこった。

しかし、警戒は必要だし、こうなったら全員で警戒するべきだ。

だって全アジア人だけ差別にあうのはどうかと

思っていた矢先であった。

少年の隣のクラスの中国人のウーちゃんは

中国のお正月に里帰りした様子で、そういうわけであれから

中国で足止めをくらってヴィンチに戻ってきていないという。

そっか、いつ帰ってこれるんだろうね。

なんだか、こんな田舎の村にも話題のウィルスは近いのだ。

しかし、イタリアの厳重な即決判断は、正しいかもしれない。

このキリスト教特有のSolidarietàソリダリエタ(団結)は

他国との関係を薄くしてもイタリアにはある。

国がキリスト教を本にあるから、弱いものを放っておかない。

お年寄りだってこれ以上被害者はだせないと首相は伝えていた。



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風がヒューヒューと唸っている。

まるで、コロナー、コロナーといっているようで空が怖い。

今イタリアはコロナウィルスで機能がストップしている。

10km離れた大きなスーパーの棚には買い占めが出現し

小麦粉とパスタ(特にペンネ)とトマトソースが消えているという。

私も小麦粉が欲しいと思っていたところだったのに

トスカーナの住人は考えることが同じようだ。

キュッキュとブドウの枝は曲がる。

しっとりとした気流はブドウの肌を潤わせているようだ。

足元にはビーツがわんさか生えている。

人工の畑なんかより生き生きしている。

テントウムシは、コロナウィルスを他所に交尾をせっせとしている。

コロナウィルスで隔離されたイタリア北部の村では

日々の習慣スキンシップができずに

遠くを眺めるように家族を見つめている。

早春の涙は、なにを伝えたいのであろう。



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この頃、ブドウは涙を流す。

春の喜びであろうか。

生きる幸せであろうか。

子を産む漲る力であろうか。

なんと情緒のある呼び方であろう。

私は、この涙と呼ばれるPiantoピアントという症状を

喜びの涙のように見えて仕方がない。

ブドウはUvaウーヴァ、ブドウの木をViteヴィーテと女性名詞で表す。

そう、ブドウの木は私と同じ女なのである。


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ピアントは、春の陽気を察して

リンパが流動し始める樹液のことである。

剪定した口から、ポタポタと涙のように樹液が垂れることから

ピアントと呼ばれるそうだ。Piantoの直訳は、涙、泣くこととある。

近くで見ないとわからなし、いつでも見られるわけではない。

そこがいじらしく、女のさり気なさが感じとれる。



そのピアントが出始める頃

枝をキュッキュッと優しく補助しながら曲げて

一番下の架線に縛り付ける作業をする。

樹液が流れ始めると、枝が柔らかくなるからだ。

それでも、早い品種と遅い品種がある。

赤ワイン用のサンジョベーゼなんかは早い方で

白ワイン用のトレッビアーノは遅い方。枝の曲がり方が全然違う。

さらに、晴れの日、風の日、雨の日、霧の日でも違う。

ここ最近、ちっとも雨が降らないから、大地までもが乾いている。

早朝だけ、野草や緑肥たちの寝息が残っている。


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農主が、こーして欲しいあーして欲しいと注文する。

芽が隠れないように確認して、縛ってあげてね

あ、でもさ、これボクぐらいしか言わないよね

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そうそう、アナタぐらいよ、そんなこと気にしながらやってるの!

でも私は賛成である。

農主が気が付いたことを教えてくれると

農主の性格や意図することが伝わる。

たかが枝を縛るだけかもしれないが、全てが繋がっているのである。

剪定をするためには、芽掻き作業で残された枝を使い

枝を縛るには、新しく生まれる枝たちの

成長の空間バランスを考えなくてはいけない。

芽掻き作業では、縛られた枝の形で

冬の剪定のことを考えなくてはいけない。

農主の考えや性格がわかればわかるほど

農主が創造するブドウ畑ができあがり

農主が想像するブドウが生まれてくるのである。


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おじいちゃんが手伝ってくれる。

おじいちゃん、今日は枝縛りだね。終わるかなー。

終わるさ、まだ早いくらいだからな。二人でやれば速いもんだ。

おじいちゃんは、昔流のヤナギの枝(Saliceサーリチェ)

で慣れているから、現代流の生分解する紐と

それ用の道具を使ってやることは困難である。

紐でヤナギ風に縛り付けている。

おじいちゃん、畑に来るとタイムスリップして手先はよく動く。

体力だって仕事欲は旺盛だ。

ただ、私がジョバンニになっちゃうだけ。


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この小春日和をいいことに、私は畑でお弁当を広げる。

まだ熱い麦茶とまだ温かいスープと梅干入りおにぎり。

スープは具沢山、昨晩の残り。

夫はこぼれそうな液体では嫌がるだろうと

片栗粉を入れてトロトロに。

家族で同じお弁当、バラバラなところでお弁当。

温かいもの食べると、体が一休みする。

作業中は、汗をかいたりすることもあるけれど

逆に汗が引いたほっと一息ついたお昼には

体温と同じくらいの温かさがまた、体に無理が無い。

週七日で畑仕事をしている今日この頃に

このランチタイムは、広大な空の下と大地の上で

家とは違う呼吸ができる時間である。

菜の花を摘んで今晩のお供にしよう。

向こうに満開のミモザがボンボンで埋め尽くされている。

写真でも撮りに行こう、今日は女の日ではないか。

疲れているけどこういうことは勝手に体が動く。フシギ。


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我が家の男子たちに、今日は女の日よ(38)というと

お母さんオトコだからいらないって言われちゃった。

そうね。なんで男の仕事やってるんだろう・・・

明日はオリーブの剪定。

その次の日はブドウ、オリーブ、ブドウ・・・

雨が降らないから、ずーっと畑仕事。

春を喜びながら力が漲るオトコ女のお母さん、ガンバル。

いろんなことができて、いろんな気配りができて

防衛しなくてはいけない身だけれど、こんな構造は女だけ。

私はオトコの仕事を選んじゃうけど

女に生まれて良かったとやっぱり思う!



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3月半ば過ぎ、現代バイオダイナミック農法のブドウ農園から緊急の電話。

「芽が出てきちゃったよ。やることいっぱいで、縛る作業終わってな~い!手伝ってぇぇぇ!」

Germogliato 

だろうよね。

雨も降らずに小春日和が毎日続いた3月、遠目でもわかるブドウの芽がプチプチピンクからミドリに開いてる様子が、日に日にわかる。

もう少しで終わるオリーブの剪定の気晴らしがてら、ブドウの枝を縛る作業を手伝った。

Legato

ブドウの枝を縛る作業は、GuyotグヨーCapovoltoカーポヴォルトという名の樹形で必要とされる。

冬眠期間の剪定後、Piantoピアントと呼ばれる樹液いわゆるリンパが流動し始めると、枝が柔らかくなりキュッキュッと形を整えながら、一番下の架線に縛り付ける作業をする。

これからワサワサ生まれる枝や葉や実を支えられるよう、しっかり縛ってあげる。

ブドウは上へ上へと伸びていくので、高過ぎてもいけない。

トラクターが通ることを頭に置きながら、ブドウの成長が架線から遠くならないように想像し、引き寄せながらしっかり結ぶ。

未来の枝がしっかり成長できるよう、縛る枝の向きを隣を見ながら判断する。

などなど、一年の作業やブドウの成長がわかっていると、未来を想像しやすければ、しっかりと作業ができる。

Filo Biodegradabile

現代バイオダイナミック農園は、地球に優しいBiodegradabileビオデグラダービレ(生分解できる)の素材の紐と道具を使って、現代的な方法でやっていた。慣れてくると、全然こちらの方が早く作業ができる。

Macchinetta per Legare

他のブドウ農園は、枝がオレンジ色のSaliceサーリチェ(ヤナギ)を使用する。切ったり水に浸けたり、作業中腰に巻いて重かったり、指が痛くなったりと、不便があった。私には続かない素材である。

ビニールの紐は、高価な上に、一年の作業後取り除き、ゴミとなり地球に優しくない。地球のことなんか考えてない農園は、そのまま土の中へ埋もれていく。

Vite Legata

白ワイン用のTrebbianoトレッビアーノは、枝が太く成長が遅いので、この乾燥小春日和の作業はやめておこう・・と後回しに。

Innesto

そうこうしている内に、新しいブドウ畑のInnestoインネスト接木作業が始まった。 

Innestato

私は、男たちを残し、天国という名の大地へ草摘みに行くことにした。

次回へ。


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