大地の住人 ヴィンチの丘で

地球と体に優しいコト ~イタリアから~

フィレンツェの端っこレオナルド・ダ・ヴィンチのふるさとヴィンチの丘に在住。 大地の自然たちと向き合って地球と体に優しい様々なコト、発見・提案・発信!

タグ:Viti

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一家のブドウの収穫は、数年振りだ。

長老がこの世を去った
その次の長が交通事故で車椅子だ。
新世代へ後継ぎした息子は、派遣グループに依頼していた。

こういった収穫などを専門とする派遣グループは
たいてい外国人が多い。
アフリカ系、パキスタン系、トルコ系、アルバニア系

我が家の隣のブドウ畑はパキスタン系の方たちが集まっていた。
ボスらしき男性がコットンのワンピっぽい長いシャツ
クルタを着ていたので、インド系かパキスタン系と察した。

向こうの畑では、かたやVendemmiatriceという収穫マシーンで
かたやアフリカ系のグループはマシーンで収穫できない畑を
手摘みしていた。遠目でもよくわかる。
去年手伝ったところだ。

その派遣グループをCooperativaと呼ぶ。
翻訳機能だと協同組合と出てくるのだが、ちょいと違う。
Adeccoのような職業斡旋会社でも派遣システムだが
あくまでも職業斡旋を趣旨としているので
いつの日か人材を募集している会社が雇う形となる。はずだ。

この手のCooperativaは、会社として運営されて
仕事の依頼があったら、出動するタイプなので
職業斡旋の目的ではない。

畑作業の場合は
土地の大きさヘクタールで料金設定されていることが多いため
大人数でやってきて、超スピードで
短時間で終わらせて儲けを出す仕組みとなっている。

南イタリアのトマトの収穫なんかもその手の仕組みなのだが
欠点と難点は、安く引き受けるので仕事は頻繁にあるのだが
実際に作業をしている作業員の収入は低賃金で
ボスががっぽり懐に入れているのかどうかしらないけど
ボスは作業をせず、指示と営業のみ。

早く終了させることで儲かるのだから
炎天下だろうが過酷だろうがとにかく収穫量。
犠牲者が出てやっと労働基準法に沿っているのか
チェックがはいり、暴露される。

人間味がわりとあって労働基準法に従うようにしてるのは
イタリア系の派遣会社。
それでも文句はいっぱい聞いているのでなんともいえないが
外国人が運営するCooperativaより
当然イタリア語でコミュニケーションがとれる分
イタリアらしくのんきさもあるw

そして、ヘクタール計算より時間計算が多いので
人数や時間が指定可能である。
料金も外国人経営より高いので
仕事の依頼は農作業よりも能力やスキルを要する内容が多い。

農園の話だと、若者がブドウの収穫をしなくなったのも
外国人派遣を呼ばなくてはいけない理由だそう...。

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というわけで、この一家の2021年のブドウの収穫は
春のたった二日の大寒波で、ブドウの芽が焼けてしまって
ブドウが少ないということで
再びファミリーで収穫することにしたのだ。

彼ら代々が暮らす4軒入ってる家は
丘の天辺にあり、彼らの丘を囲むように
ブドウ畑は鎮座する。どちらかというと
丘の下らへんにあるのかな。

あの日、冷気だった靄は静かに
このブドウ畑を包んだのだった。

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こんなに少ない収穫ははじめてだ、と嘆く。
しかも、小さい果実ばかりだ。
そして、干ばつだから、果汁は少ない。

後継ぎの息子は、別で働いている。
時間もなければ、前年度はコロナで流通が不通だったので
収入も少なく、作業員を雇うことも控え
春夏の作業をしてないという。

私は、後継ぎ息子の叔父である
ビジネスよりパッションが熱い畑を
手伝っていたので、違いがなんとなくわかる。
諦めなかった農主のブドウは
畑の位置もあるけれど
豊満なブドウが実っている。

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この日、雨まで降ってきた。
オリーブの木の下で雨宿りをした。

思い出は、一家のランチだったんだけど
車椅子の長が絶好調ではないこと
一家は全員グリーンパス取得済みだけれど
これっぽちの収穫は祝い事ではないからか
みんなそれぞれ自分チでとることになった。

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農主のブドウの収穫もいよいよはじまる。
私は別でブドウの収穫だ。

ブドウが無くなっちゃう前に食べる用に摘みに行った。

Sangiovese(早熟品種・黒いブドウ)
良さそうなのを選んだつもりが、干された果肉が裏に隠れてた。

Canaiolo(遅熟品種・黒いブドウ)
寒波の後に芽が出てきたので、とても美味しそうに育っている。

Trebbiano(白いブドウ)
ごっそり生まれてたわわになっている。

SanColonbano(白いブドウ)
赤い茎にピンク混じりの果実。

Vermentino(白いブドウ)
まだ緑っぽい色だけど、食べてみると
プチ感も酸味もちょうどよい。

Malvasia Bianca(白いブドウ)
農主が新ブドウ畑に植えた期待のブドウ。
ちょっと遠かったので今日は摘まなかったけど
Defogliatura(果実の周りの葉の除去作業)のとき
わーっとなるほど長いブドウ。
二週間前はもうちょいだったけど熟れたかな。

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Canaioloカナイオーロ
Schiacciata con l'uva(ブドウ入り甘党スキアッチャータ)を
はじめて自分で作ってみた!

スキアッチャータとほぼ同じ作り方に砂糖を二振り
間にブドウを散りばめて砂糖を二振り
生地を閉じてブドウを散りばめ砂糖を二振り

砂糖がたっぷりだから発酵を手伝って膨らむ膨らむ。
こんなに簡単だったんだ。
また作ろっと!



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そう、このブドウの周りの葉っぱをとって
お日様の光に当てる作業までを、春夏の作業とひとくくりし
Potatura Verdeポタトゥーラ ヴェルデ(直訳:緑の剪定)の〆となる。

2021年、この夏のように干ばつで日照りが続くと
地下からの水分は干され、次は
呼吸している葉から水分を補給し
果実は潤いを保つシステムになっている。

だからたいてい、ブドウの周りの葉は
パリパリに茶色く枯れている。
自然のシステムだから心配ない。

キアンティ地方は灌漑設備は設けず
自然に育てることをモットーにしている。

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ブドウたちは8月には、伸びる成長が止まる。
そのことを、Agostamentoアゴスタメントという。

成長が止まると、熟し始める。
葉っぱを枯らすまで水分補給した後は
自らお日様に当たって熟れていくのである。
すごいなぁ、本能って。
きちんと枯れる意味や、日の当たる意味があるのである。

それでも北側や枝の数が多すぎたり
上からダランと垂れ下がって影になっちゃったり
長い草が邪魔したりしていると
果実はじっとチラチラ差し込む光でゆっくり熟れていく。

その覆われた果実の周りの葉っぱを減らす作業を
Defogliaturaデフォリィアトゥーラという。

込み合ってる部分や特にSangioveseサンジョベーゼ(品種)など
キューッと引き締まったタイプのブドウは
ブドウ好きのTignoraティンニョーラ(蛾)が、ご馳走にし
チューチュー糧にしたり、卵を産んで住処にしたり
それも敵のクモが入ってこれないようなところに
幼虫は生まれ持った本能で
奥まったところに移動していくのである。

きっとVendemmiaを体験したことのある人は気づいたと思うが
グニャッと腐っていたり、ツーンと酸っぱい臭いがするブドウは
降水量が多すぎる時にもグニャが起こりやすいけど
Tignolaに寄生されていることが多い。

光を差し込むことで、敵に見つけやすくなってしまう
そんな目的もあって、葉っぱを取っているのである。

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葉っぱの取り方は、ブドウの周りだけ。
Femminellaフェンミネッラ(副梢)が邪魔してたら
それを除去することでわーっと空間ができる。
すでに副梢(新梢から生えてくる新梢のような枝)は
固くなっているのでハサミを使う。

あとは手で、ポキポキと下へ向かって落としていく。
上から日が差し込むし、腰が痛くなるので
自分が直立した位置からブドウが見えるようにすればいい。

Sfemminalleturaズフェンミネッラトゥーラ(副梢掻き)で
新梢から出ている副梢の根元からきちんと除去されていないと
収穫のとき、ブドウに目線を集中していると
その途中で切られている副梢が、目に刺さることがある。
だから収穫のときにメガネが必要なんだけど
トータルで作業をしている人や時間に余裕のあれば
この時に、収穫時の最終チェック、事故を予防できる。

こんなこと誰も教えてくれないけれど
作業が次の次ぐらいのことまで熟慮されていると
収穫のとき速く安全に作業ができるのである。

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農主が、Tignolaにやられたグニャの部分を見せてくれた。
あぁ、幼虫が動いている。

農主は見つけるたびに悔しそうだ。
真夏、毎日観察していたのに
一週間ちょっと目を離した隙にTignolaが飛び回ったそうだ。
農業は、うかうか休暇さえもできない。

腐ったところは取り除いてくれという。

そして、この春の寒波の後
芽が出て実までついたのはよいが
生育がばらついた。

その未熟な果実はもう間に合わないから
青いブドウも取り除いてくれという。
ブドウの木の負担のためと
Vendemmiatoriヴェンデンミアトーリ(ブドウの収穫をする人)のためだ。
収穫する人は、もしかすると収穫は初めてかもしれない。
いちいち説明していられない。

私も他がはじまっちゃったら、農主の畑は手伝えない。
だからいろんなことを想定して作業をした。

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春の寒波で失望した割には、豊満な果実がなっていた。
ブドウの木に果実がひと房だって作業を怠らなかった農主。
それなりの新梢が生まれ、それなりの果実が生まれた。

諦めずに手を施してあげると
ブドウのココロに届いているんじゃないかと
このプチプチのブドウをみて想った。

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空はウロコ雲で覆われている。
大気は朝、秋の吐息を吹きかける。
賑やかVendemmiaがはじまった。



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思春期青少年は、こちらの中学三年生で卒業試験があった。
その試験を受ける前に、今期の成績が発表されて
10段階の内5だか6だと
最終試験=口頭試験が受けられないとかなんとか言っていた。

何度か説明してくれたが
私はこっちで学校生活を送っていないので
今一アドバイスもできなければ
感覚もよくわからず、共感できない。

強いて言えば、私がときどき免許を取るための
試験勉強の打ち込み具合とか
発散具合なんかを共感したものだった。

青少年は、あまり語ることなく
自分で荒れながら(?)でも対処しているので
私は勝手にやらせっぱなしだし、任せていた。
だって、私の日本の中学三年生に
親が出てくることなんてなかったもの。


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で、その中学三年生の卒業試験に
三年間学んだことのミニ論文を作成させて
それはもう、MicrosoftのOfficeを使ってプレゼンですよw

昭和の中学三年生て、高校の入学試験に向けての
夏期講習や冬期講習を受けて、ひたすら入学試験勉強。

我が思春期青少年は、テーマを「暴力」などとし
暴力を、国語算数理科社会美術音楽に関連付けるのである。

OfficeWebのPowerPointで、そのプレゼンを作成していたが
PCを持っていなかったらどうしていたのだろう
とマジ疑問が残る。

青少年の誕生日プレゼントを
ママ友のアドバイスでPCが必要と情報をキャッチしていたから
デスクトップPCをプレゼントして
私もちゃっかり使わせてもらっているけれど
リモート授業もテストも資料を見るも作成も
PCがあって当然のように学校がシステム化されてしまっている。
その場で強制ではなかったが、時間をかけて電子化システムに
結局のところ全員導入している。

余談だが、我が家はWIFIをルーターで導入していなかったのに
そういうわけで必要性に応じてしまって
月々払いではないチャージ系のWIFIモデム(TIM)を導入。
このチャージ系は、別荘用に誕生したシステムだそうだ。


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話は戻りそういうわけで、それはなにも学校のことだけではない。
役所系や税金控除、コロナの補助金なんか、対面を減らして
どれもこれも電子化されつつあり
むしろ電子のみ有効な受付もたっくさんある。

老人はどうするんだろう、とたいていの人は心配するが
アモーレの国イタリアは、家族で対処したり
キリスト教の国イタリアは
ボランティアや助け合いで成り立っているようである。


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で、そのテーマである暴力の説明からはじまる。
体力的なことと精神的なこと
どちらも脳みそから伝達させている、などと入っていき
トルコ領にいるクルド人との争いの話がでてきて
戦争時の独裁的権力ファシズムを説明している。
特定人種絶滅政策や強制収容、強制労働...

収容所で書かれた詩人のポエムをとりあげた。
安心な生活してた頃
夕方暖かい家に帰宅して、温かい食卓があってさ
時に友たちと笑ったもんだ
なんでこんな制度になっちゃうんだ
平和なんかなにもない、ボクらは泥の中で働くだけだ
一切れのパンを奪い合い、またひとり死んでひとり生き残っている
女も丸坊主にされ、名前もない
ボクらの目は空っぽだ
ボクは書いて書いて子孫へ残す
深く心に刻んで、忘れてはいけない、絶対に忘れてはいけない

ナショナリストファシストはイタリアにだってあって
ドイツと手を組んでスペインを攻撃した。
スペインの芸術家Picasoは
アンチ暴力アンチ戦争をテーマにゲルニカを制作、発表。

人種差別、暴力、戦い、それは世界を跨いでいたこと
アメリカに渡ったアフロたちは、白人の奴隷となり
綿積み労働で彼らが歌っていた歌がBLUESとなった
と思春期青少年は〆る。






個別に口頭試験が30分ずつあり
なぜかそのために、私が送迎をした。
戻ってきた青少年をみると、どうやら感触がよかったらしい。
たいして勉強してるようには見えなかったが
本人は、「人生で一番勉強しちゃったなー」などと
疲れ果てていた。

試験が終わったら、夏がくる!
頭の中は、勉強と夏の妄想でいっぱいだった。

全員が登校する最終日は、公立の終業日と同じ日だった。
「本当にもうみんなと会えなくなっちゃうの?」
ポツリ、ぼやいていた。
幼稚園から一緒の地元の同級生。
中学のときの友だち数人は、一生の友だちになるさ。
別れがさみしいと想えるクラスでよかったね!
そのポツリが聞けてよかったよ。

えっと..この後、試験の結果発表や修了書?みたいのをもらって
進学先の学校に面接に行くんだそう。
日本のやり方と違うから、あの頃の経験が生かせない。
全てが初めてで、親子でドキドキした初夏だった。


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私は、綿畑ではない、ムシムシと汗がしたたるブドウ畑にいた。
結実したコロコロブドウたちの誘引作業に手を焼いていた。

急に暑くなって、ブドウの成長が目まぐるしく
特に何メートルにも伸びる枝は、急成長といった感じだった。
茎も太くなるし、伸びて重くなってくるから
架線や柱に絡ませてあげないと、新枝の根元から折れてしまう。
せっかく健全に生まれてきた来年のも
もげてしまったらもったいない。
それを、よっこらしょと持ち上げてあげるのだ。


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ひとりぽっちの畑には、ツバメが勢いよく飛んでいる。
きれいな羽の薄茶色のハトたちが静かにとまっているとおもったら
バタバタっと急に飛び立つ、その度に振り向いちゃう。
小さな森の中にもトリがいて、ヒトが口笛を吹いているように
ビブラートさせて、とっても陽気そう。
それを聴いてひとりぽっちでも陽気でいられるんだ。

30度近い気温のときはもう早朝からはじめて午前中のみ。
ヴィンチの丘は、14時~18時までが一番暑い。
その時間帯だけ風は吹くのだが、日差しの暑さにはかなわない。

そう、一年で一番日が長い夏至だ。
一日の熱が冷めない。
思春期青少年の夏妄想熱も熱いままずっと続きそうだ...




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彼女たちは産むのに必死だった。
体のホルモンは、今、産まなくてはならないようだ。
ひと房でも多く産みたい...
そんな風に見取れたブドウたちだった。
愛おしい。

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あの一晩で、第一声のブドウたちは、フリーズした。
そして、そのまま体を凍らせ、生気が抜けた。

私はその生気が抜けたあの夜を想像した。
きっと小さな光る魂が
冷たくて静寂で覆うようにのしかかってきた気流の中で
ぽっと浮かんでは消え、ぽっと浮かんでは消え
つかもうとしてもふっとすり抜ける魂の姿を
まるでアニメでも描くような幻想的な夜を想像した。

産みの母体は、ただただ子の魂を見届けるしかなかった。
そのまた母体の産みの親、畑の主も手の施しようがなかった。

あるところでは、畑のあちこちで火を焚いて
愛しのブドウに暖を与えたそうだ。
友を何人も何人も呼んで、一晩中火を焚き続けたそうだ。
地球の反対側では火災で木々は燃えていくっていうのに
こっちは、樹に暖をくべるなんて、悔しい笑みを浮かべてしまう。

深夜手前、ある農薬農園の主は、魂を覆う魔法の薬を散布したそうだ。
私は、そんな風に聞こえてきた。
この世に、祈りとか魔法で生き残ることってできるのか。
化学の力だけでずっと生き延びることはできるのだろうか。
これにも悔しさの笑みがこぼれてしまう。

農主は、黙って自然の現象に目をつぶったそうだ。
一睡もできなかったそうだ。
あの夜こそ早く過ぎ去って欲しい夜はなかったそうだ。
早く...早く...夜が明けてくれ。

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確か二日ぐらい、芽生えの4月、7・8日に
突然の寒波がイタリア中部を襲った。

農主曰く、翌日にはもう、生気は抜けていたそうだ。

私は、庭の満開の藤で気が付いた。
これはもしや。とブドウ畑へ向かった。

その観察後数日経ってまた観察しに行った。
農主も観察しにブドウ畑を歩いていた。

農主は今にも泣きそうだった。
声が震えるのか、あまり話したくなさそうだった。
顔が悔しさでひきつっているようだった。

私は心配そうに農主を見つめたが
農主の目を見ていると今にも涙が吹きこぼれそうだったので
...そう察したので、私は目をそらした。

それぐらいしか私にできることはなかった。
かける言葉さえもない。
今の言葉は無意味にしかないようで
私は無口に、あの夜を想像するしかなかった。

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いつもだったら、4月の半ば頃にブドウの芽掻き作業をする。
しかし今年は、一ヶ月ぐらい遅れているほど春の気温が上がらない。

私は四月の寒波は初体験だったので
今年の芽搔き作業は無いとおもっていた。

あれからブドウたちは
あるだけのエネルギーと生気で吹き返していた。

農主だって四月の寒波は初体験なんだそうだ。
あんなに農民が怯えている現象なのに。
誰も知らないのか。

コロナ時代に生きていることの凄さを感じるけれど
四月の寒波経験も併せて凄い時代に生きているとおもった。

ブドウたちは、あの冷気で自然界に顔を出した
ひ弱な芽だけを凍らせたのだった。

イタリア語ではBruciatoと焼けたと表現され
焼けたように茶色くなっていた。

ブドウの樹液・リンパは流動し続け
あの時まだ顔を出していなかった芽は生まれていた。

そして、身籠るはずの芽の大半は焼けてしまったのならば
母体のホルモンはその放出先を
今まで眠っていた蕾(gemme dormiente)までたたき起こし
小さな芽をいっぱい目覚めさせた。

身籠る芽は去年生まれた(2年目)枝の蕾から芽生える。
その芽が焼けてしまっていたら、果実は生まれない。
もしくは3年目の枝からひょっこり芽が生まれて果実が成ることもあるが
本命の果実ではないので、旨み的には本命の芽からの果実よりは劣る。

本命の果実が生まれないのに芽掻き作業って必要なのか?
疑問はあったが、小さくても大きくても生まれてきた芽たちを
今度は来年使えそうな枝を選抜しなくてはいけないという。

納得はいくが、特にCordone Speronatoという樹形は
小さい芽の大集合で選抜に苦しんだ。
GuyotやCapovoltoの樹形は、母体が支え棒のところしかないから
一本に対しての作業域が狭く速くできる。
だって身籠る芽はほとんど焼けちゃったんですもの...

もしこの先も芽が出てこなかったら...
特に去年とかおととしに植えたBarbatella(ブドウの苗木)
また植え替えしなくてはいけないと
悔し笑みの苦笑いで農主は私に答えた。

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日曜日、夫が山に水を汲みに行くというので
私もセミナー用のレオナルド・ダ・ヴィンチの
生家の写真を撮りにくっついていった。

家の中にいると寒いぐらいなのに
ちょっと散歩すれば体は温まった。

草花はちょうど咲き乱れていた。
6月の初夏のイメージだったヒラヒラの赤い花びらが風に揺れる
Papaveri(ヒナゲシ)がもう咲いている。

温暖化なのか寒波なのか
自然界のホルモンやサイクルがよくわからなくなった。

そして、我が家のイチジクは第一声の芽は焼けてしまったが
レオナルド・ダ・ヴィンチの生家にあるイチジクは
平気な顔して例年通りだ。
我が家のサクランボは花が焼けちゃったけど
こちらは、もう果実らしい形で結実まで成功している。
なんなんだこの差は!

あの冷気は標高が低い丘に沈んでいたようだった。
標高があるところではそんなに被害はなさそうだ。
確かに丘の上の方は被害薄で、下の方は被害大と一目瞭然である。
そして柱に隠れていた芽なんかは、免れているのである。

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「今年は、テーブルワイン用の収穫になるのかなぁ?」
「いや、ボトル用も収穫するさ。
むしろ今年のブドウは美味しいかもよ。夏の気候によるけれど。」
「なんで?!」
「だってさ、勝手に芽掻きされちゃって(芽が焼けちゃって)
生き残った芽から生まれるブドウは濃厚にきまってるだろう。」

わー!そっか!そう考えると美味しそう!
濃厚に旨みを集中させるための芽掻き作業Scacchiaturaである。

量的には損失大だし、コスト的にも被害大だけれど
ちょっとだけ期待とか希望がみえてきた。

絶対にこの子たちでできあがったワインがのみたい!
生き残った彼女たちの命をそそぎこみたい。

ポジティブに生きるってこれも私たちの生き残る業かもしれない。
見方や考え方、視線や思考を一歩離れて考えるのも
今、困難だらけの世の中に必要な姿勢だなと
身をもって想う。

また自然が教えてくれた。
だから生きるっておもしろい。

こういうことを産んでくれた母に伝えたい。
もちろん無理なんだけど
想いだけでも残しておこうとおもう。

日曜日はイタリアでも母の日だった。
世界のママたちに、ありがとう。
産んでくれてありがとう。




・・・・・・・・・・


【お知らせ】

オリーブオイル関西2021が
Covid-19緊急事態宣言延長のため中止となりました。
セミナーに登壇する予定でした。
プロフィールを残しておきます。
お申し込み下さいましたみなさま
ありがとうございました。

「ヴィンチの丘で オリーブ剪定」

せっかくですので、別でLive配信を計画しております。
お楽しみに!

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パスクワ前まで雨も降らず天気の良い日が続いた。
そう、パスクワまでに終わらせようと週七日畑作業をして
体中が痛かった頃だ。

あの日は、オリーブの剪定をしていた
初夏を思わせる汗ばむどころか突然の暑さに息苦しくなるほど
ある意味危険な日もあった。

その初夏の陽気は肌で覚えている。
6月のブドウの誘因作業の時期で
よく喉が渇いて顔や体がほてるあの感覚。

温暖化はここまで変えるのか…
今からこんな暑くちゃこの先思いやられるなと
暑さに怯えていた。

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大地にポツンポツンと人が立っている。
農夫たちは絶望していた。
遠目でわかる。
私は、まだ農夫たちと話してないが
言わんとすることは想像できた。

パスクワも本当は雨予報だったのが雨は降らず
そのあたりから気温が下がり始めた。
そして、氷点下となる夜が続いたんだ。

どのTVニュースでもネットニュースでも
農作物が危機と報道されていた。
あるブドウ農園では、薪を焚いて
愛おしいブドウのいる畑の気温を上げる
なんていう手を尽くしていた。
その光景は目を疑うように、ブドウに暖を与えているのである。

その後暖が役に立ったかわからないが
今年初めて試みる手ではないようだ。
各地で毎年どこかで危機に襲われてきたことがわかる。

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我が家の由緒あるPucci家の庭園にある藤の分身
ブドウのような剪定だということも発見できて
順調に芽が出て膨らんで、花が咲き乱れて
強い香りを放ち、いろんな種類の
ハチたちの溜まり場となっていた。

しかしこの四月の寒波は、強そうな植物藤の花をも姿を変えさせた。
それを日に日にみて、こっちも気が落ち込んでいき心配になった。
あんなに気品があってどの時間でも美しかったのに
どんどんしぼんで、生気が失われていくのである。
今は、醜い藤がぶら下がっていて
みんなゾンビみたいになっちゃったのである。

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今年こそは実になりそうなサクランボの花も満開中だったのに
時が止まったように、茶色くなっていく。

ほんのりピンクが入ったヒラヒラしたリンゴの花も満開中だった。
一足先に満開だった洋ナシは結実は済んでいたのか心配だ。

もともとあったイチジクの木は地域で発生した病気に罹って
枯れ気味で、昨年新しく苗を植えて根付いて喜んでいた矢先
小さなイチジクも寒波にやられてしまった。

それじゃぁ簡易温室トマトの芽はどうなんだ?
うぅぅ、トマトまでやられている。
全部ではないから、このまま様子をみよう。

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私も寒くて家の中にいられない。
陽は出てるから、散歩をした。
しぜんとブドウ畑に向かっていた。

自分は農園の主でもないただの作業員だけど、胸が苦しくなった。
ついパスクワ前までブドウの枝を縛って
ブドウの芽生えに胸を膨らませていたのだから。
日に日に成長していく様子が遠目でもわかり
緑のプチプチが光って見てとれていたのである。

光っていた彼女たちはダランとうなだれ、生気も精気もない。
ポタポタと溢れるほどだった樹液は凍ってしまったのか。
葉はパリパリに乾燥して、緑色だった新枝は茶色くなっていた。

農薬ブドウも耐えられない。それじゃ有機ブドウはどうなんだ。
農主のブドウたちの様子をみに歩いた。
陽は出てるから歩くと汗ばんでくる。

有機の…バイオダイナミック農法のブドウさえも
やられてしまっていた。
農主は向こうの方で土を
トラクターで耕していた。

生き残ったブドウたちのためだ。
ここで放ったらかしにしてはならない。
消毒しただろう臭いも鼻に入ってきた。手は打ったようだ。

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それでも枯れちゃったら生き返ることはないだろう。
生気がみなぎる樹液に触れてドキドキしたことを思い出した。

未来の枝は残せるのか。
この先また温かさをぶり返せば
未来となりそうな枝は生まれてくるのか。

農主に声をかける勇気はなかった。
遠くから手を振ったけど
気づいていたのか悲しんでこちらを見ていたのかわからない。
今度会う日はいつだろう。
もう私の出番はないはずだ。

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自分は無力を感じた。
自分の体で覆うこともできない
手をつないで逃げることもできない。

自然の生命て、どう生き残って子孫を残せるか
それは植物や動物や虫だけのことではない
私たち人類も今そんなシンプルな原点に気づかされている。

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はじめての体験であった。
生気が失っていく姿をみとけと家族に言った。

それでも野草は木々の精気を吸い込んだように生き生きしていた。
負けてはいけない。私たちも野草のように強く生きよう。



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