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あぁ、この虹に出会うために今日があったようだ。


あぁ、こんな言い伝えに出会うために果実を摘んでいるのだろう。



虹は、奇妙に二色のようにみえた。

黒っぽい雲ともくもく白い雲と薄く染まった青い空と

弱った黄色い光りの複雑な空を

農園の主は何度も何度も不安そうに眺めた。


そんな空に現れた虹をみて

ブドウだけをみつめている私たちに

「赤い色が太いとブドウが豊作で

緑色が太いとオリーブが豊作なんだ。

みてごらんよ、今日の虹は二色しかない。どっちも豊作だ。」

そんな言い伝えが昔から言われてたよなぁ、と主はつぶやいた。


私は男たちと虹をみあげた。

若いブドウの木の収穫はブドウが低い位置にあった。

私たちは腰が痛くてすぐにはピンと伸ばせなかった。

でもその二色のような虹をみたかった。

腰に手を当て、虹とその話にききよった。


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ここの農園は、半分機械化するためのブドウ畑に

ここ数年仕上げてきた。

半分は生産用に残しておく。

その古いブドウ畑のブドウを手で摘んでいる。

手摘みをしている間に、待望の収穫マシーンが

到着するはずだった。

しかし、ここはやっぱりイタリア。予定日の朝には来なかった。

雨が降った前日の夕方にピカピカに到着した。


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なぜブドウ畑を機械化することにしたか。

農園の主兄弟、答えは一つだった。

毎年、人手を集めるのが困難になってきたからだそうだ。


がんばり屋な人材が確保できない。

天候に左右されて毎日続くわけでもない。

いつはじめるかもブドウ次第で正確に伝えられない。

がんばり屋はたまたま失業中で出会ったけど

すぐ仕事をみつけてそっちにいっちゃう。

若者は肉体労働ができる根性はあまりなくって

二日もしたら来なくなる。

個人で本業でやってる人材をキープするのも難しい。

だから熟れた男たち、早く年金に入った男たちに

声をかけちゃうそうなのだ。


人材を呼び込む方法はもっともっとありそうだけど

なかなか違うことに投資はできないし

ITの世界にとびこめる世代の農園はなかなかいない。


去年なんかBracciante(季節労働を仕切るボス)率いる

パキスタングループをよんで、わーっと収穫したそうだ。

我が家の隣の農園なんか

そのパキスタングループを雇って満足してたから

ここの主兄弟も喜んでいるのかと思ったら

「アイツはさ、作業が早く出来てりゃいいんだよ。ウチは違う。」

ボスは労働者に水もあげないでさ、怒鳴ってて

それ見て心が痛くなっちゃった...と悲しそうにいう。...そっか。


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ここの主兄弟の農園は、我が家の一番近くの農園で

以前夫が手伝いにいってた農園だ。

小さな息子を引き連れた私は、当時断られた。


その頃のヴェンデミア(Vendemmiaヴェンデンミアブドウの収穫)は

毎日がお祭り騒ぎのようなランチ付きで

夫は毎日、今日は何を食べたとか私たちに報告する。

収穫終了の夕食会は、私も息子も誘ってくれて賑やかだった。

みんな顔を真っ赤にして踊ってた。

これぞ収穫祭だった。


夫の仕事力とコミュニケーション力がすこぶる頼もしかったことと

近所ってこともあって、それから近所付き合いがはじまった。

そこで誰も知人のいない田舎暮らしでも

何かあったらあそこんチに逃げるんだよ!と息子に教えたほどだ。


私がブドウとオリーブの剪定の勉強をして

あっちこっちで経験を積んでいることを気にしてくれていた。

息子も一人で動く思春期少年に成長し

やっと仕事に集中できるときを待っていた様子だ。

でも遅かった。

手摘みから機械化に世代交代しちゃうなんてぇ...


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機械化に更新するにあたって、新しくブドウ畑を耕すことによって

国からの助成金を実際の経費の三分の一ぐらいかな

もらえるらしいんだけど、申請も工程も経過も調査されるらしい。


そこで、代々受け継がれたヴィンチの丘では珍しい

Pergolaペルゴラ(樹形;ブドウ棚)も解体しなくてはいけないそうだ。

高くて腰を曲げずに作業ができたのに!

趣があってここの農園の謳いどころのような気がするのに。

家の裏にあって、夏場の逃げ場だったそう。

そこからのヴィンチ村の眺めは最高だ。


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雨が降った。

私はまた寝た。

午前中の二度寝は金縛りにあったかのように爆睡して

体温がほどよく保たれて、すっごく気持ちがいい。

ずっと続いてたブドウの収穫で疲れていた。


風が吹いた。

私は歩いた。

オリーブが膨らんで色が変わってきた。

風で下に落ちちゃったオリーブもあった。

それでも強く育てたオリーブたちは何事もなく風に揺れている。

これで気温が下がれば、おいしく熟れる。

虹の緑色はオリーブだ!



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