DSC06554

思春期少年は近頃ずっとイライラしている。

イライラしている人に、イライラをやめてくれよ、と言ってもわからない。

それは大人だって同じだとおもう。


少年に言わなければいけないことって、しつけのことぐらいだ。

毎日同じことをいうだけのことだけど

毎日言われることなのにやらない思春期。

面倒臭いが毎日の小言より面倒臭い。


暴力的になっても精神的にも肉体的にも無駄だし

放っておくのも存在的にも時間的にも見捨てる感じで

なんかこう納得いかない。

真似して対抗してもそれはそれで大人気ない。


残りは一つ、寄り添うことにした。


DSC06556

「なんかさ、最近イライラしてるよね。

なんかあんの?マックでも行かない?」


少年の目はキラキラした。「Siiiii!!行く行く!」

( イタリアのメッセージで語彙を伸ばす時、~を使わず

伸ばしたい語彙の母音をいっぱい書く。SIシィという返事。 )


少年は、こんなど田舎に住んでいるのに

中古のiphoneをバージョンアップして

アプリの色を統一した黄色のページに

何故かマックのアプリをダウンロードしていた。


そのアプリには、メニューと料金、予約するのかテイクアウトするのか

そんなアプリで、近くにマックなんかないヴィンチの丘の少年には

全く必要のないアプリなんだけれども

出番がきました!という感じに、親子でメニューをながめたw


( パニーニの国イタリアにMcDonald'sが登場したのは

1986年ローマのスペイン広場とある。

1990年には8軒、1997年には100

2001年には300軒、2010年には400

イタリアの現役思春期ヤングはそういうわけでマック育ちなのである。

ジェヌインに原産パニーニを食べてればいいものを

ヤンキー風味なジャンクフードとたまり場にはもってこいの

マーケティングにはヤングの心を掴みまくる。 

フィレンツェにマックが登場した'90年代の終わり

日本人の間でとってもがっかりしたのを覚えている。

今や次世代にマックのあり方を教えることになるとは...。 )


少年はワクワクしている。

「ボクは、ベーコンバーガーSetにしようかな。」なに、それ?

「ベーコンが入ってるんだ。」ふーん。

お母さんもさ、子どもの頃はマックとか行ってたんだよー。

マックでは、シェイクと細くてヨレっとしたポテト

ハンバーガーは向かいにあったモスバーガーで買ってたの。

「なに?マックシェイクってぇ。」えっマックシェイク知らないの?!

「なに?モスバーガーってぇ。」アレ?日本で行かなかったっけ?


'70年代、木更津の西友の駐車場近くにあった

マックとモスバーガーにいっつもはしごしてたことを思い出した。

もらったお金を握りしめて走って買ってきて

母親が車の中でラジオを聴きながら待っててくれるの。


おつりはお利口さんにきちんと渡してさ。

我慢できずに帰り道、ちょっとずつポテトを食べちゃうの。

運転しているマキちゃんのお母さんにも食べさせてあげるんだ。

長いポテトはヨレヨレの、そのフニャ感が好きだった。

短いのはカリッとしてて最後に残るヤツ。


少年は、ナゲットが食べてみたいという。

お、いいよ。ちょっと多めに買ってお父さんのお土産にしよっか。

とアペリのつまみを想像していた。

そう調子のイイ返事をきくと、ますます楽しそうだった。


「じゃぁじゃぁ、ナゲットにバーベキューソースをつけていい?」

焼き鳥に塩とタレだったら塩派の私には

ソースもマヨネーズも邪道であった。

25centesimi(セント)する。」え、お金払うの?ソースに?

「うん、でも、ナゲットにはバーベキューソースなんだ。」ふーん。


「お母さんはチーズバーガーでいい?」

イヤだよ。お母さんは、フィッシュバーガーにして!

「え、フィ...フィッシュ?」うん。タルタルソースがかかってるでしょ?

「うーん。」 アプリで、フィレオフィッシュという名で確認。

あるじゃん。それで。


予算出して。「え?」
予算出しておいて。お金渡すから一人で買っておいで。「う.うん。」


DSC06553

トスカーナはイエローゾーンで、夜間外出禁止ぐらいで

日中州内だったら割とゆるゆるな外出制限だった。


出かける前に今月のお小遣いを渡した。

自分のお金でいろいろ買えるじゃん!「えーw」

一応持ってって。「うん!やったー。金持ちになった気分w」


本当の目的は進学する志望校の様子だけでも見に行くことだった。

学校見学といわれるOpenDayはオンラインで済ませていたので

距離感と位置的なイメージを知っておいてほしかった。


土曜日だったけど、土曜日だから高校は授業をしてて

ちょうど授業が終わる前に私たちはウロウロした。

バス停確認。校舎から校舎の距離確認。

校舎のキレイ度確認。これは今一だった。

世界遺産のような建築物の目の前にある。

うわーうわー私がワクワク興奮した!

「お母さん、指ささないで。恥ずかしいから。」はいはい失礼。


DSC06549

思春期少年もキョロキョロしながらドキドキしたに違いない。

それだけで、一気にお腹が空いた。


私たちは計画通りマックへ行った。

ドライブスルーっていう手もあるけどどうする?

自分一人で買いたいと言うので

私は車の中でラジオを聴きながら待っていた。


少年は、注文する内容をブツブツと練習していた。

お母さんはフィレオフィッシュね!「うーん、言えない...。」はぁ?

ブツブツ練習しながら、お金を握りしめていざ出陣。


ニヤニヤしながら戻ってきた。どれどれ。

結局、フィレオフィッシュと言えずチーズバーガーを買ってきた。

そして、ナゲットは多めにすると高かったから一番少ないので。

「あ、バーベキューソース忘れた!」なんじゃそれw

高くなって足りなくなったら恥ずかしいから

ギリギリに頼んだと照れながら言う。

いつも金くれ金くれってせがむのに。

どケチと浪費は考えものだけど

気をつけてお金を使うことはまぁいいことだ。


私たちは、中で食べるのも恥ずかしいし、コロナだし

ってんで、目の前の商業施設の駐車場で食べた。

マック内には、親子連れや若者はもちろん老人もいたそうだw

老人...勇気あるなぁ。

そう、イエローゾーンになると途端気持ちも緩むのである。


「明日にはニキビでるなぁ。」

ふーん、そんなことも知ってるし、気にしてんだ。

前に、フィレンツェのお友だちとマックに行った翌日

すぐ吹き出物が出たらしい。


DSCN0507

なんか随分人が少ないね、土曜日なのに。

今日の予定は、志望の高校をチラ見して、マックでランチして

田舎の商業施設の2軒ぐらい目星のある服屋で

セール中のショッピングを少年は狙っていた。


気分転換にいいんじゃないかと

こういうタイミングに機会のプレゼントってなんか嬉しいじゃない

これも思春期少年に寄り添うチャンスだと想ったのである。


少年は最近、本当にイライラしてて、かわいそうになっちゃうぐらい。

話を聞いてあげたいのに、イライラしてて落ち着けないのである。

だから出発する前、あんなにニコニコしてたのを

見たのは久しぶりだし、部屋に閉じこもってたのが

こっちに来ていろいろ喋りはじめたのであった。


もちろんお金はあまり使えないけれども、ささやかに

ワクワクする時間、ワクワクしながら話せる空間

そこにお金を使うのもいいな、と思ったのである。

癖にならない程度に。

不意なアイデアだったから、少年も不意に嬉しかったはずだ。

この不意が気分転換のタイミングなのかもしれない。


なんでどこもお店しまってんだろうね...

あ、思い出した!

イエローゾーン中も週末の商業施設はお休みだったんだ...

うぅ...自由じゃないってこういうことなんだ...


少年はもちろん残念がってショボショボ歩きながら

唯一開いてたホームセンターに入って

私は電球コーナーで切れた電球を探していると

少年は展示品のカラフルなLEDをみて

「ボクの部屋に、こういうカラフルな電気を点けたいんだ。」と

自分の理想の部屋を語りはじめた。


Storni

洋服ダンスには等身大鏡がくっついてて

机にはデスクトップPCLED付のキーボードで。ゲーマーか?

頭の部分が細くなっててローラーがついた手すり付き椅子。ほぅ

ベッドはソファベッド風に背もたれもあって

お客さん用に下からベッドがでてくるのがイイ。お、お客さん?

一緒にゲームをするんだ。はぁ。

壁の色は塗り替えて、青にしたい。えぇっ。なぜ青?!

LEDの電気を部屋中につけたいんだ。部屋中?クリスマス気分?

で、ボクの好きな絵とか写真をいくつか飾りたい。www


要約すると短いんだけど、少年のはしゃぎようは長かった。

興奮と動揺で彼の視線は遠くをみつめて

「あぁ、考えることがいっぱいあり過ぎる。」という。

やっぱりそうなんだ...

「宿題がなにしろ多すぎる。」と。

リモート授業でできなかった分をきっと

宿題で穴埋めしているに違いない。そうとしか考えられない。

進学のこと

でもお友だちと遊びたいけど遊べない

サッカーもようやく週一ではじまったけどもっとしたい

サッカーも観たい

ゲームもしたい

映画も観たい

寝たい

好きなものだけを食べたい

欲しい物がいっぱいある!洋服も靴も電子機器も。

どこか行きた〜い


DSCN0915

部屋の模様替えどころかまだ完成してなかった少年の部屋は

自分でデザインしたいそうだ。お、いいね!

インテリアデザインならお母さんに任して!「いや、ボクがする。」w


洋服だって、いっぱいあるはずなんだけど、どれも着たくないんだって。

何故かというと、お下がりばっかりだから。

自分のセンスで選びたいそうなんだ。

わー、それはよくわかる。


急に自我が出て、急に体も変わってきて

頭はパンパンで、でも自由が効かない。


キミの意向はよくわかった。

欲しいモノが簡単に手に入らないもどかしさ。


社会の根本と人生のはじまりみたいなことに気がつきはじめ

私はなんか嬉しかった。自身の思春期を思い出した。


お金の使い道やお金を手にするための勉強期間

少しずつ自分のモノにしていく楽しさともどかしさ

どんどん妄想してモチベーションを保つこと

ときに買ってみたはいいものの、使い物にならないこともあること

欲しい物を調べること

デザイン(形にするためのアプローチ)しながら研究すること


そんなことを踏まえながら親子ではしゃぎながら話したこの日

久々にキラキラとケラケラと積極的に会話ができたことが

とーってもとーっても楽しかったし嬉しかった。

他愛もないことなんだけど、どうしても記録しておきたかった。


「今日は随分笑うね。」

「ボク、お友だちの前ではいつもこうだよ。ずっと笑ってる。」

へーそうなんだ。私たち親子だ。

これ聞けただけでなんだか全部様子がみえたような気がした。


思い出した。中学の卒業式のみんなで交換っこした色紙に

いっつも笑ってたマキちゃんの笑顔忘れないって

みんなが書いてくれてた。

知らないうちに笑ってるだけなんだけど

ひとからすると私はよく笑う子なんだ。

大人になっても涙を流しながら笑ってるのは気がつくと私だけ。

友たちは降ってきたエピソードをリアルに話してくれて

それを私は想像して自分が体験しているようにゾクゾクする。

そのゾクソク感が笑いになっちゃうんだ。


DSCN0898

些細なことなんだけど、イラついている人に寄り添うって

ヤンキー風に誘って、我慢していたことをやらせてあげて

話をうんうんと聞いてあげること

それだけで閉じていた心はそっと開きはじめる。

それは子どもにも大人にも通じるみたいだ。



*私がセレクトした過去の関連記事Best 3 Archivi Selezionati

鳥が舞うようこそ立春 Crochettona al forno

モチベーションa wet day

息子へThirteen




Grazie di aver visitato!

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。




にほんブログ村 海外生活ブログ ヨーロッパ情報へ


Instagram
 ≫≫≫ obatamakivincirealmakici