「ボンジョルノ!」
は?ビックリ。誰?
通りすがりの人かな、よくあることだ。
な、なぬ!近寄ってきた!
「君は、いつもこんな仕事をしているの?」
あ、はい、まぁ、そうですけど。
私は、農主のブドウ畑で、ブドウの枝縛りをしていた。
腰には、生分解可能な紐とゴム製の紐を袋に入れて
ハサミと生分解可能紐を縛る道具をセットでベルトにぶら下げている。
さらに、お茶の入った水筒もプラスした
貴重品入れウエストポーチを体に巻いて
っもう体にはジャラジャラいっぱいぶら下がっているが
列の長いブドウ畑では、体に巻き付けていないと気が気でない。
田舎での通りすがりのおしゃべりなんて日常茶飯事だ。
散歩する人、同じく畑で働いてる人、近所の人…
おしゃべり下手にはちと面倒なシチュエーションであるが
慣れれば、天気のことと世間的に話題のことなんかを話しておけば
全然大丈夫。今はワクチン打つか打たないかの話かしら。
僕、これこれこんな畑を持っててね…と、自己紹介が始まった。
ようは、2年目のブドウの枝を真っ直ぐ支え棒に縛り付ける作業を
やってほしいというのだ。…はぁ。
一番辛い作業じゃない?というと、遠くを見つめてニヤニヤしていた。
農主のとこが終わって、試験が終わって
それから手伝ってあげますよ。ということにおさまった。
どの辺に住んでるかとか電話番号を交換した。
約束の日の前日に電話ください。
約束の日の午前中に電話をもらったみたいだが
枝縛りに夢中ででれなかった。
私はガラケで通話、ネットものはタブレットと分けている。
お昼に、タブレットの中のメールやチャット連絡を確認をすると
男のメッセージも紛れ込んでいた。
「さっき電話したんだけど。17時頃また電話するね。」
スミマセン、18時にしてくれると確実に電話でます。と返信。
18時ちょい過ぎにかかってきた。
あ、ボナセーラ、さっきはスミマセン、今帰ってきました。
「うん、知ってる。見てたよ。」
えーーーーーーーなんで???ドキドキドキ。
え、え、見られてるって気になるぅ……
そんな反応できないから、待ち合わせ場所と時間をさっさと決めた。
翌日、私はちょっと早めに着いて、男を待つことになった。
ピッタリに着こうと思えば着ける距離だ。
スクーターで1分とかからない場所。
約束の3分前に彼は現れた。
男は自転車で、私はスクーターで後ろを追った。
こんな道知らない。でも近所なのである。
「ここにスクーター駐車して。」あ、はい。
地面て平らかどうかって問題にしてはじめてわかる。
自転車だと走ってみて坂道かどうかわかるように。
慣れないスクーターの向きを変えてたら
「手伝ってあげる。」と、スクーターが倒れないように彼はおさえていた。
けど、おさえてたら前に進めねーじゃねーかよ!
すんません、一人でやるんで、手を放してください…。よっこらしょ。
うわー、ここに辿り着くのか!
わー、ウチ、丸見え!
こっから見てたのかー!
あぁ、でもヴィンチが見える。
あ、あの木は夕焼けを撮るときの丘の木だ!
あら、ウチからみえる向こうの丘の天辺にいるんだ。
ヴィンチはトスカーナでも早々レッドゾーンだけど
我がことな青少年はリモート授業ちゃんとやってんのかなー
そんなことを思いながら泥棒の監視もしつつ我が家を眺めた。
男は、自分が買ってきたゴム紐を私に見せて
「これでいいかな?」と聞く。
いいけど、何個買ったの?「2個。」
え、すぐ終わっちゃうじゃん。大丈夫かなぁ。
ついでにさ、生分解できる(biodegradabile)紐も買ってきて。
将来幹となる枝を支え棒に近づけ真っ直ぐに保つよう
導くために縛る作業である。
重要であるが、すでに真っ直ぐに生まれた枝には
そう手をかけることも時間をかけることもない。
しかし!男は、ご丁寧に3か所しばりつけている。大丈夫かなぁ。
オリーブの剪定もそうだけど、時間をかけてきっちりやるところと
そこはパスしても大丈夫な場合がある。
そこを見極めることができるのは、知識と経験しかない。
男は、ブドウ畑のオーナーとなるが、経験はゼロであった。
相続した土地にブドウを植え
ブドウを売ることを副業にしたいそうだ。
男はものすごくノロい…
この仕事は好きでなきゃ続かないよ。パッションのみ。
というと、男は「そうだよなぁ。キミの言う通りだ。」
大丈夫かなぁ。
立って移動して、しゃがんで縛り付ける。
それを1Mごとにやっていく。何本も何本も。
ブドウ畑を1,2分ごとにうさぎ跳びする感じ?
腰より太ももの筋肉痛。
これ、去年もやった。
オーナーはやりたがらないから作業員がやる。
そういう辛い作業のとき私は
誰かがやってる作業なんだからがんばろう
て何度も何度も自分に言い聞かせる。
一日目は調子いいんだけど、二日目から筋肉痛がはじまり
三日目は家の中でも早く歩けない状態。
でも不思議なんだよね、作業中は気にならなくなってくる。
リラックスした家で大変。
寝てても体中が痛くて目が覚めちゃう。
この男、ノロいけど一緒に付き合ってやってくれている。
ときどき社交的に話しかけてくれたりもする。
90%私がやった。きっと喜んでくれてるはずだ。
あと数日で満月にもなる。それもあるのかなんなのか
この日やたらとブドウは涙を流していた。
リンパは、溢れ出し幹を白くさせ地面に円を描くように濡らした。
気が付くと、時差が嫌いなサマータイムに突入し一日が終わらない
ロックダウンのパスクワ(復活祭)休暇がはじまる。
四季はなんとなくわかるけど
行事やカレンダーがこのコロナ禍でボケはじめている。
☆ 関連過去記事 ☆
『拳をもった新緑を導く L'allacciatura』
『ロックダウンスプリング Pasquarentena』
『三月の風物詩 Pianto delle viti』
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