2016年のトスカーナの初夏は、雨がよく降った。
かといって一日中降り続くわけではない。
30分ぐらいのスコールのようにやってくる。
Vinciヴィンチの丘では、西に見える雨雲がこっちに向かってくるときに雨が降ることが多い。
遠くの景色が見えなくなり、グレーがかった白っぽい一面がこちらに向かってくるのである。
この雨のおかげで大地の恵みたちは、雨を受け止めようとドンドン生い茂り、葉は吸収したものを蒸発させる。
彼らの呼吸がまた雨を呼び起こしているようだ。
こんな気候が合っている植物と合っていない植物がある。
5月に開花するオリーブは、「水」が必要だそうだ。
まずまずの結実に成功したようだ。
ブドウの開花時には、雨はご無用・・・だそうだ。
まぁそれでも実はついている。
ブドウ畑で今、最も追いつかないほど手を焼いている作業は、Allacciaturaアッラッチャトゥーラ。誘引と呼ばれる作業である。支え紐(架線)に巻きつけながら近づけてあげる。トラクターや今後の作業をしやすくする為と、ブドウの重みで枝が折れないようにする為である。
作業前
作業後
私より倍に伸びているのではないかというぐらい、天へ向かって伸びている枝を呼び寄せ、一番上の架線にグルグル巻きつけていく作業、Capannaturaカパンナトゥーラも同時に行う。
(農園に依っては、Cimaturaチマトゥーラという摘心作業を7月頃機械で一気にやったりするが、ブドウの質は落ちる。)
下にダラ~ンと落ちて成長している枝も人間が持ち上げてやる。そうすると、混み合うので、ついでにSfemminellaturaスフェンミネッラトゥーラと呼ばれる副梢掻きもその場に応じてやる。
(これも農園に依っては、機械でドッとやってしまう。見事な垣根が出来上がる。当然ブドウの質は落ちる。)
私より背のあるブドウの棚に這いつくような作業では、長ズボン、長袖シャツ、四方につばの付いた帽子、+マスクと完全防備!・・私はね。日本人は予防好き。
虫刺されを予防し、虫の糞だか虫除けに撒かれた硫黄の粉が呼吸気管に入るのを防ぐ。
陽の差す頃は汗をかくが、汗は体内の浄化!と考える私は、そんなに不快には思わない。
世代交代した85歳の農夫がブドウの棚の向こうでつぶやいていた。
「昔はよぉ、あるべき気候だったんだよなぁ。虫だっていっぱいいたんだよ。今はアッチコッチで殺虫剤なんてものを使いやがってよぉ。生態系が狂っちまったよ。化学肥料なんていらんよ。緑肥で十分。こんなに元気に育ってるじゃないか。見ろ、ブドウがこんなにぶら下がってるぞ。」
(日本語に訳すと、こんな風に聞こえてきた。)
この農園は現在Biodinamicoビオディナーミコバイオダイナミック法に従って管理されている。
この世が生み出す「光・水・空気・大地」を大いに活用することにある。
少量の銅(消毒用)と硫黄(虫除け用)を散布する。
肥料は緑肥のみ。
樹への作業はLuna Discendenteルーナディシェンデンテのみ。
自然を尊重することで次第に自然と協調できるようだ。
P.S. ブログ『ブドウの芽かきScacchiatura』を参考に。