パスクワ前まで雨も降らず天気の良い日が続いた。
そう、パスクワまでに終わらせようと週七日畑作業をして
体中が痛かった頃だ。
あの日は、オリーブの剪定をしていた
初夏を思わせる汗ばむどころか突然の暑さに息苦しくなるほど
ある意味危険な日もあった。
その初夏の陽気は肌で覚えている。
6月のブドウの誘因作業の時期で
よく喉が渇いて顔や体がほてるあの感覚。
温暖化はここまで変えるのか…
今からこんな暑くちゃこの先思いやられるなと
暑さに怯えていた。
大地にポツンポツンと人が立っている。
農夫たちは絶望していた。
遠目でわかる。
私は、まだ農夫たちと話してないが
言わんとすることは想像できた。
パスクワも本当は雨予報だったのが雨は降らず
そのあたりから気温が下がり始めた。
そして、氷点下となる夜が続いたんだ。
どのTVニュースでもネットニュースでも
農作物が危機と報道されていた。
あるブドウ農園では、薪を焚いて
愛おしいブドウのいる畑の気温を上げる
なんていう手を尽くしていた。
その光景は目を疑うように、ブドウに暖を与えているのである。
その後暖が役に立ったかわからないが
今年初めて試みる手ではないようだ。
各地で毎年どこかで危機に襲われてきたことがわかる。
我が家の由緒あるPucci家の庭園にある藤の分身は
ブドウのような剪定だということも発見できて
順調に芽が出て膨らんで、花が咲き乱れて
強い香りを放ち、いろんな種類の
ハチたちの溜まり場となっていた。
しかしこの四月の寒波は、強そうな植物藤の花をも姿を変えさせた。
それを日に日にみて、こっちも気が落ち込んでいき心配になった。
あんなに気品があってどの時間でも美しかったのに
どんどんしぼんで、生気が失われていくのである。
今は、醜い藤がぶら下がっていて
みんなゾンビみたいになっちゃったのである。
今年こそは実になりそうなサクランボの花も満開中だったのに
時が止まったように、茶色くなっていく。
ほんのりピンクが入ったヒラヒラしたリンゴの花も満開中だった。
一足先に満開だった洋ナシは結実は済んでいたのか心配だ。
もともとあったイチジクの木は地域で発生した病気に罹って
枯れ気味で、昨年新しく苗を植えて根付いて喜んでいた矢先
小さなイチジクも寒波にやられてしまった。
それじゃぁ簡易温室トマトの芽はどうなんだ?
うぅぅ、トマトまでやられている。
全部ではないから、このまま様子をみよう。
私も寒くて家の中にいられない。
陽は出てるから、散歩をした。
しぜんとブドウ畑に向かっていた。
自分は農園の主でもないただの作業員だけど、胸が苦しくなった。
ついパスクワ前までブドウの枝を縛って
ブドウの芽生えに胸を膨らませていたのだから。
日に日に成長していく様子が遠目でもわかり
緑のプチプチが光って見てとれていたのである。
光っていた彼女たちはダランとうなだれ、生気も精気もない。
ポタポタと溢れるほどだった樹液は凍ってしまったのか。
葉はパリパリに乾燥して、緑色だった新枝は茶色くなっていた。
農薬ブドウも耐えられない。それじゃ有機ブドウはどうなんだ。
農主のブドウたちの様子をみに歩いた。
陽は出てるから歩くと汗ばんでくる。
有機の…バイオダイナミック農法のブドウさえも
やられてしまっていた。
農主は向こうの方で土をトラクターで耕していた。
生き残ったブドウたちのためだ。
ここで放ったらかしにしてはならない。
消毒しただろう臭いも鼻に入ってきた。手は打ったようだ。
それでも枯れちゃったら生き返ることはないだろう。
生気がみなぎる樹液に触れてドキドキしたことを思い出した。
未来の枝は残せるのか。
この先また温かさをぶり返せば
未来となりそうな枝は生まれてくるのか。
農主に声をかける勇気はなかった。
遠くから手を振ったけど
気づいていたのか悲しんでこちらを見ていたのかわからない。
今度会う日はいつだろう。
もう私の出番はないはずだ。
自分は無力を感じた。
自分の体で覆うこともできない
手をつないで逃げることもできない。
自然の生命て、どう生き残って子孫を残せるか
それは植物や動物や虫だけのことではない
私たち人類も今そんなシンプルな原点に気づかされている。
はじめての体験であった。
生気が失っていく姿をみとけと家族に言った。
それでも野草は木々の精気を吸い込んだように生き生きしていた。
負けてはいけない。私たちも野草のように強く生きよう。
☆ こちらの関連記事もどうぞ ☆
『女のブドウの涙 Pianto』
『虫の暮らし il mondo degli insetti』
『ブドウのあくび Scacchiatura』
Twitter・Instagram・Facebook・Ranking・BlogmuraをFollowすると
Blog UpdateのNotficasionが受け取れます。どうぞご利用ください。
【お知らせ】
オリーブオイル関西に参加します。
Grazie di aver visitato!
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
Instagram ≫≫≫ obatamakivinci ☆ realmakici