この頃、ブドウは涙を流す。
春の喜びであろうか。
生きる幸せであろうか。
子を産む漲る力であろうか。
なんと情緒のある呼び方であろう。
私は、この涙と呼ばれるPiantoピアントという症状を
喜びの涙のように見えて仕方がない。
ブドウはUvaウーヴァ、ブドウの木をViteヴィーテと女性名詞で表す。
そう、ブドウの木は私と同じ女なのである。
ピアントは、春の陽気を察して
リンパが流動し始める樹液のことである。
剪定した口から、ポタポタと涙のように樹液が垂れることから
ピアントと呼ばれるそうだ。Piantoの直訳は、涙、泣くこととある。
近くで見ないとわからなし、いつでも見られるわけではない。
そこがいじらしく、女のさり気なさが感じとれる。
そのピアントが出始める頃
枝をキュッキュッと優しく補助しながら曲げて
一番下の架線に縛り付ける作業をする。
樹液が流れ始めると、枝が柔らかくなるからだ。
それでも、早い品種と遅い品種がある。
赤ワイン用のサンジョベーゼなんかは早い方で
白ワイン用のトレッビアーノは遅い方。枝の曲がり方が全然違う。
さらに、晴れの日、風の日、雨の日、霧の日でも違う。
ここ最近、ちっとも雨が降らないから、大地までもが乾いている。
早朝だけ、野草や緑肥たちの寝息が残っている。
農主が、こーして欲しいあーして欲しいと注文する。
芽が隠れないように確認して、縛ってあげてね
あ、でもさ、これボクぐらいしか言わないよね
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そうそう、アナタぐらいよ、そんなこと気にしながらやってるの!
でも私は賛成である。
農主が気が付いたことを教えてくれると
農主の性格や意図することが伝わる。
たかが枝を縛るだけかもしれないが、全てが繋がっているのである。
剪定をするためには、芽掻き作業で残された枝を使い
枝を縛るには、新しく生まれる枝たちの
成長の空間バランスを考えなくてはいけない。
芽掻き作業では、縛られた枝の形で
冬の剪定のことを考えなくてはいけない。
農主の考えや性格がわかればわかるほど
農主が創造するブドウ畑ができあがり
農主が想像するブドウが生まれてくるのである。
おじいちゃんが手伝ってくれる。
おじいちゃん、今日は枝縛りだね。終わるかなー。
終わるさ、まだ早いくらいだからな。二人でやれば速いもんだ。
おじいちゃんは、昔流のヤナギの枝(Saliceサーリチェ)
で慣れているから、現代流の生分解する紐と
それ用の道具を使ってやることは困難である。
紐でヤナギ風に縛り付けている。
おじいちゃん、畑に来るとタイムスリップして手先はよく動く。
体力だって仕事欲は旺盛だ。
ただ、私がジョバンニになっちゃうだけ。
この小春日和をいいことに、私は畑でお弁当を広げる。
まだ熱い麦茶とまだ温かいスープと梅干入りおにぎり。
スープは具沢山、昨晩の残り。
夫はこぼれそうな液体では嫌がるだろうと
片栗粉を入れてトロトロに。
家族で同じお弁当、バラバラなところでお弁当。
温かいもの食べると、体が一休みする。
作業中は、汗をかいたりすることもあるけれど
逆に汗が引いたほっと一息ついたお昼には
体温と同じくらいの温かさがまた、体に無理が無い。
週七日で畑仕事をしている今日この頃に
このランチタイムは、広大な空の下と大地の上で
家とは違う呼吸ができる時間である。
菜の花を摘んで今晩のお供にしよう。
向こうに満開のミモザがボンボンで埋め尽くされている。
写真でも撮りに行こう、今日は女の日ではないか。
疲れているけどこういうことは勝手に体が動く。フシギ。
我が家の男子たちに、今日は女の日よ(3月8日)というと
お母さんオトコだからいらないって言われちゃった。
そうね。なんで男の仕事やってるんだろう・・・
明日はオリーブの剪定。
その次の日はブドウ、オリーブ、ブドウ・・・
雨が降らないから、ずーっと畑仕事。
春を喜びながら力が漲るオトコ女のお母さん、ガンバル。
いろんなことができて、いろんな気配りができて
防衛しなくてはいけない身だけれど、こんな構造は女だけ。
私はオトコの仕事を選んじゃうけど
女に生まれて良かったとやっぱり思う!
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『ブドウの枝を外す~畑の中の人生~Stralciatura』
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