大地の住人 ヴィンチの丘で

地球と体に優しいコト ~イタリアから~

フィレンツェの端っこレオナルド・ダ・ヴィンチのふるさとヴィンチの丘に在住。 大地の自然たちと向き合って地球と体に優しい様々なコト、発見・提案・発信!

タグ:Viti

少年が小学生になる頃、職安に行った。

ちょうどその時期(2013年冬)Fondo Sociale Europeo / Programma Operativo Regionale2007-2013によるCorso di Agriformazione(農業士養成講座)の募集があることを知った。応募の締め切りは翌日だった。

私を導いたあの日、最後の年の最後の日の最後の応募だった。
(現在2017年の今プログラムは改正され、1826歳までと年齢制限がある。)

「女性の場合は、ひょっとして?!ということもありえるわよ。」とフェミニストな女性の指導員は応援してくれた。

定員15人中女性5人の枠。しかも日本人の私なんて・・・。

Depliant  -Corso di Agriformazione


試験があった。会場には、大学入試を思い出すような人だかり。貸し切った
Empoliエンポリ(ヴィンチ村から10Km。地域では中心となる街)のある高校は無職の・・農業を学びたい人たちでごった返していた。


数日後、試験にパスした連絡が入った。

私の履歴書を持ちながら、本気でやる気があるかを強く問う。(6歳までの子を持つ母親にベビーシッター制度もあった。少年は7歳になったばかりだった・・・。)

この講座は、450時間の講義・実習・研修を一年かけて学び、最後は認定試験があり資格まで取得できるホンモノの講座である。ヨーロッパの社会基金をトスカーナの地方開発事業に当てられているため、授業料は無料。


数日後、連絡が入った。

5人の中に選ばれたのである。

本命の大学には落ちたけど、こんなところで受かるなんて。日本人の私だったからか・・・。


ほとんど休まず通った。

時に少年も私の横で講義を聞いていた。実習の畑にもついてきたっけ。

講座の仲間が助けてくれる。講師軍も日本人の私を応援してくれた。

言語のセンスのない私は、イタリア語で専門用語を覚えるのが大変だった。

時々テストだってある。イタリア語の説明じゃぁ面倒!と何時間も日本語サイトで調べたっけ。


植物のカラダの話は、だんだん小・中・高の理科の授業へタイムスリップしていった。

生態系・植物の病気・虫・・大人になって勉強すると、毎日歩いている大地の生き様を思い知って恥ずかしくなる。


オリーブの話は、おもしろかったな。特に試飲の授業。こんな風に五感を使うのか。

実習までオリーブの木をまじまじと見たことがなかった。どこから実が生まれるのか。定義がわかると彼らのカラダを眺めることができる。


ブドウの剪定は、誰よりも早く覚えたような気がするよ!

1年目の枝・2年目の枝・・最初はさっぱりわからなかった。頭で考えてるだけでなく、目で彼らのカラダの色や形、手で固さを感じ、リンパの流れを理解してあげる。


トラクターだって訓練した。傾くトラクターを運転している私は自然に身を任せられなかった。トラクターや機械は、農作民の力を代行する。


テストの前は血眼となって勉強した。

女パワーは輪だってつくる。集まって勉強会をしたことも。


2014年の初夏、私は認定試験に無事合格し、Certificato di Competenze(資格認定書)を授与した。


Certificato di Competenza


トスカーナの農産物、ブドウとオリーブを中心に。

剪定をするにはいろんなことを知ってなくてはいけない。剪定を学ぶということは、栽培を学ぶことと同じだ。

オリーブ剪定・・講師Sani Graziano

ブドウ剪定・・・講師Tamburini Daniele

植物・生物学・・講師Achilli Massimo

トラクター・・・講師Lupi Sandra & Maccanti Sergio

現在活躍中の講師軍。彼らの経験談を聞くために休んでられなかった。


この講座の目的は、知識のある人材を増やすことにある。安全な農業で安全な生産をすること。安全に働き、安全な食物を提供し、地球を安全に守ることである。

代々継がれることの多い農園は知識が狭いだけでなく、外部の薬品を売るバイヤーたちの話にのり、地球の生態系を崩壊し、大地も空気も水も私たちのカラダまで汚染させてしまった。

そんな状況にやっとやっと気付き、やっとやっと動き出したのである。


私は、人間社会で大切な職業は、農業であると思う。農業をやってる人がいないと食べていけない。

食物を生産するということは、人のいのち以上に地球のいのちにも関わってくる切実な職業だと私は思う。


世の中は、やっと少しずつ動き出す。


Proiettarsi

私は講座を受けたはいいものの、所有の土地は我が家の小さな菜園のみ。

ヴィンチの目の前の大地で、果実からアルコールへ、果実からオイルへと姿の変わる魅惑な植物を小さなカラダと小さな時間で語り合うチャンスを持つことができた。

日本人の私に投資をしたトスカーナ。何ができるか勿論試行錯誤。

まずは、地球と体を守る知識を紹介することから始めようと思う。

この場を借りて、ブログをはじめた理由(その1)をお伝えすることができた。


Luna Nuova di Gennaio

日本とイタリア、地球の反対側だって、同じお日様に当たり同じお月様を見つめている。

グルグル回る地球で、たくさんの「つなぐ」輪が生まれるよう、どうか暖かく応援してください。


最後まで読んでくださいましてありがとうございました。

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ありがとう↓

Scacchiatura”スカッキアトゥーラという単語でGoogle検索すると、トマトのわき芽の除去作業がTop10に並ぶ。


Potatura Seccaポタトゥーラ セッカが冬のメインの剪定だとしたら、Potatura Verdeポタトゥーラ ヴェルデは芽が出て成長が止まる頃までの作業のことをいう。直訳すると緑の剪定という意。直訳の方がわかりやすいかもしれない。


ブドウの木のPotatura Verdeポタトゥーラ ヴェルデと呼ばれる作業の期間にはいくつかある。

Scacchiaturaスカッキアトゥーラ  むだ芽除去作業=芽掻き

Allacciaturaアッラッチャトゥーラ  棚の架線に縛ってあげる作業=誘引

Sfemminellaturaスフェンミネッラトゥーラ  二番芽除去作業=副梢掻き

Cimaturaチマトゥーラ  一番上の架線を超えた枝を処理する作業=摘心


その①番のScacchiaturaスカッキアトゥーラ(芽掻き)は、葡萄酒の質を良くするためにする。量より質である。

実が成る枝でも、位置的に邪魔であったり混み合っていたり下向きだったり・・・する枝は、残念ながら除去する。

ピョコピョコ実の成らない今年生まれた芽たちも栄養を吸い取ってしまうので、取り除く。

しかし、位置的に来年・再来年に使えそうな枝は今年実がつかなくても残しておく。その枝から芽の出る2年後の実に期待するのだ。

未来のことを考えずに全部除去してしまうと、適した形に留めることができなかったりする。(ブログ『ブドウの木の剪定Potatura delle Viti)

本来実の成る枝たちが、バランス良くそして未来の枝たちも残されたブドウの木は、病気になりにくく、適した樹形を保ち、質の良いブドウをつくりだす。

味だけではない。葡萄酒において大切な果実の皮の要素を十分に確保できる

特に農薬を使わないBIOビオ(Biologicoビオロージコの略=オーガニック)で栽培している農園は、こういうところに手間隙かけているはずである。
放ったらかしが
BIOなのではない。


Metodo Biodinamicoメートド ビオディナーミコ(バイオダイナミック農法)に従う農園は、Scacchiaturaスカッキアトゥーラ(芽掻き)45月のLuna Discendenteルーナ ディシェンデンテ(28日間のサイクルをする回帰運動中、天体の赤道から見て月が秋分点(下降)側の約14日間)に作業を行う。

この期間は、エネルギーが地下で活動するので、地上での作業・・特に剪定など植物に傷を伴う作業は、地上のエネルギー活動が少ない期間に行うことで、植物の傷への負担を少なくさせるという考えだ。

いやいや、人間だって同じことが言える。イタリアだったらどのカレンダーにも月のマークが記されている。我々の眼でも見える新月・上弦・満月・下弦の4つを参考にしながら活動するだけでも、いつの日か私たちの体調の違いに気が付くはずだ。

話は逸れたが、ポキポキ折れるピチピチ潤った生まれたばかりの枝は手でも折れるが、傷口を滑らかにするため、ちょっと大きい枝は先の尖ったハサミで切り取る。

根元のSelvaticoセルヴァーティコ(野生)の若芽たちも取り除く。

さらに・・・邪魔な草や畑の横にある大きな木の根が繁殖して生まれた若木も、我々の手でハサミを変えて取り除いてあげる。

どの作業も大変だが、ブドウの木の調和を”感”を使って仕上げるScacchiaturaは好きだ。


私がブドウの木に向かっている向こうでは少年がSovescioソヴェーショ(緑肥)Piselliピゼッリ(えんどう豆=グリーンピース)をおやつ代わりに食べている。
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実は小さいがプチプチと甘味があって美味しい。欲張って大きそうな実を食べると苦味がある。少年も気が付いたようだ。

そら豆は、その頃まだ実になっていなかった。花が咲いておりハチがたくさんいた。耳を澄ますとハチの音。

てんとう虫もたくさんいた。てんとう虫を見るとなぜかホッとする。
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そして、所々に穴を見つけた。
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Cacciatoreカッチャトーレ(狩人)と言ってもイノシシのみ狩をする農主が教えてくれた。

あの穴はイノシシの仕業で、たまにBietolaビエトラ(ふだん草)と間違えるような大きな緑色の葉を持ち一枚の花びらで黄色い柱の雌しべを持つ植物の根を食べるそうなのだ。
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へぇぇぇ。

虫や動物の集まるブドウ畑。

春の音や色を見ながら聞きながらのScacchiaturaは気持ちがいい。

今年は、変な日焼けをしないよう、長袖シャツに襟を立てて。



4月のLuna Discendenteルーナ ディシェンデンテ(28日間のサイクルをする回帰運動中、天体の赤道から見て月が秋分点(下降)側の約14日間:Metodo Biodinamicoメートド ビオディナーミコ(バイオダイナミック農法))にブドウの接木Innestoインネストが行われた。

このVignaヴィーニャ(ブドウ畑)は、4~5年前にブドウの苗木が植えられた若い畑だ。(ブログ『ブドウの苗木Barbatella』参照)

元気なブドウの木は、前年には実をつけ収穫もできた。そして、Forma di Allevamentoフォールマ ディ アッレヴァメント(育樹の形)ができるまでに成長した。(ここでは、トスカーナで一番適しているのではないかと思われるGuyotグヨーという名のFormaフォールマ(樹形)が使われていた。)

しかし、植えつけられた既に接木されたブドウの苗木から生まれてこなかった木もあった。台木(根がある部分)からSelvaticoセルヴァーティコと言われる接木された品種ではない野生のブドウが育っている。葉や茎ですぐわかる。

成功しなかった45年前に接木された苗木を、今回、再度、接木してみようという試みである。

しかし、どの農主もInnestoインネスト(接木)ができるわけではない。

Innestatoreインネスタトーレと呼ばれる接木師を雇うのである。

Innestatoreは、話によると・・・・・・・・とても儲かる職業だそうだ。(!)

Innestoインネスト(接木)が行われるぞ!と声を聞きつけて見物しにくる人もいる。

私もお手伝いの合間に、ちょっと見物。そう滅多に見れることではない。


Innestatoreインネスタトーレ(接木師)が来る数日前に、元気にSelvaticoセルヴァーティコ(野生)から芽が出ているブドウの木の周りの土を、上から一番目のNodoノード(節・こぶ)が見えるところまで、傷をつけないように掘る。今回これが一番大変な作業ではなかっただろうか・・・。
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それをしておくよう、Innestatoreは要求する。InnestatoreInnestoしかする気はない。コストにも関係する。

農主は、今年度の冬の剪定(Potatura Seccaポタトゥーラ セッカ)で、農主自ら選んだ枝の品種を保存していた。黒いビニール袋に入れ、冷蔵庫に入れたり温度管理をしていたそうだ。


芽をつけた20cmくらいに用意された接穂(接木の上になる品種の部分)が持ち運びやすいよう木箱に入れられ、Innestoインネスト・・ブドウの接木作業が始まった。
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木箱の接穂の品種はSangioveseサンジョヴェーゼ。
 

よく見ると、2タイプの接木方法が使われていた。

台木に差し込むタイプ。

接穂に差し込むタイプ。
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手早い作業でどんどん行われていく。

丘の上りに向かって作業をし、上まで着くと下まで歩いて戻ってくる。そして、隣の列でまた上りに向かって作業をしていく。ブドウの木からブドウの木へ移動してはしゃがんで作業をし、Innestoインネスト(接木)作業も容易ではない。


土の中のブドウの木を接木のために切った時、Piantoピアント(樹液の雫)が溢れてきた。(ブログ『ブドウの木の剪定Potatura delle Viti)

Innestatoreインネスタトーレ(接木師)は言う。

苗木を植えたり、土の中での接木作業は、冬のなごりの23月より春真盛りの4月を勧めるそうだ。なぜなら、土の中はまだ冷たいからなのだそうだ。

あのPiantoピアント(樹液の雫)が地上で起こるのは2月の終わり頃から3月。

この接木作業が行われた日の地上は、4月も半ばを過ぎた雨が一ヶ月降らない乾燥した陽の差す2023℃。土の中は、ひんやりした3月だったんだろう。

土の中が冷たいことくらい誰もが知っていることだが、無言な植物のしくみを調べていくと、こんなことがまた新たな学びの一つとなっていた。

きっと、あの樹液が”接ぎ”を良くするのではないかと期待する。

Calendario Lunareカレンダーリオ ルナーレ(月のカレンダー:Metodo Biodinamicoメートド ビオディナーミコ(バイオダイナミック農法))を見ると、Giorno di Radiceジョルノ ディ ラディーチェ(の日。地球の周りで恒星運動をしている12の星座中、Toroトーロ(牡牛座)Vergineヴェルジネ(乙女座)Capricornoカプリコールノ(山羊座)Radiceラディーチェ()に影響を与えるそうだ。地上の生体力では、Terraテッラ(大地)に値する。)の日であった。

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Innestatoreインネスタトーレ(接木師)が作業した後を追って、農園を手伝う者たちが、まず、支え木をブドウの木の横になるよう押しながら置き、粉々にされた土を接木された木の頭が隠れるまで山のようにかける。
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風で舞い上がった応援に駆けつけた近所の農夫の帽子。
服も軍手もボロボロな仕事着を身に着けているのに
こんなオシャレな帽子をまとって仕事をしている。ニクイ。
畑で見つけた鳥の羽なんだろう。

本当は、すぐに水をかけた方が良いらしいが、3日後の雨予報を信じ、農主は自然の力に任せた。

天気予報は当たり、雨が降った。

自然のスケジュールに合わせて、うまいこと日程が組めたことに感心する。



DSCN2280 picasaあっ、こんなところにも。

これも増殖法の一つである。ああやって土で覆うと根が出てくるそうだ。根が十分に出てきた頃にカット。

またどこかで柿の木が植えられる。

卯月(=苗植月の転)に差し掛かるLuna Discendenteルーナ ディシェンデンテ(28日間のサイクルをする回帰運動中、天体の赤道から見て月が秋分点側の約14日間)Giorno di Fruttoジョルノ ディ フルット(果実の日。地球の周りで恒星運動をしている12の星座中、Arieteアリエーテ(牡羊座)Leoneレオーネ(獅子座)Sagittarioサジッターリオ(射手座)Fruttoフルット(果実)に影響を与えるそうだ。地上の生体力では、Fuocoフオーコ()に値する。)に、ブドウの苗木Barbatellaバルバテッラが植えられた。


Barbatellaバルバテッラ(ブドウの苗木)は、Portainnestoポルタインネスト(根になる部:台木)Filosseraフィロッセラというブドウにしかつかない対敵アブラムシから避けるため、アメリカがオリジナルの台木を使用する。

そして、Innestoインネスト(実がつく部:接穂)は、Sangioveseサンジョヴェーゼなどの品種が接木される。

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苗木を仕立てる専門所では、室内で温度管理されているので、私がBarbatellaバルバテッラ(ブドウの苗木)を手にした時は、まだ眠った赤ちゃんのようであった。


大人のVitiヴィーティ(ブドウの木たち)は、急な春の到来で芽が覚めていた。
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寒さの残った3月から初夏のような気温で春が訪れると、突然寒さがまたやって来るのではないかと近所の農夫達は心配している。この先、収穫まで気が気でない。


Barbatellaバルバテッラ(ブドウの苗木)も芽が覚めれば、根の部分が膨らんで、自力で大地の栄養を吸い込む。
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30cmほどのBarbatellaの根の先を切り落とし・・・・・
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Metodo Biodinamicoメトド ビオディナーミコ(バイオダイナミック農法)Corno Letameコルノ レターメ(雌牛の糞を雌牛の角に詰め込み、土の中で寝かせたちょっとスピリチュアルな肥料)Botteボッテ()3437℃の湯にグルグルと回し混ぜ、その液体にBarbatellaの根を一晩漬けておく。

これをDinamizzareディナミッザーレ(「活力を与える」と辞書にある)と、彼らは呼んでいた。


大地には、Barbatellaの頭をちょこっと出し、根の部分は深々と植え付ける。

我々人生のように何十年も生きるブドウたちは、一度植わったら動かず黙って生きる。

作業のしやすいように、整列して植えられる。
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その後、実がつくのは、4~5年先である。


彼らがすぐに美味しい栄養が吸いつけるように、農主はSovescioソヴェーショ(緑肥:Favetteファヴェッテ(小さいソラマメ)Piselliピゼッリ(エンドウマメ)Orzoオルツォ(大麦)Senapeセナペ(カラシ)を農主は選んだ。実のなる前に刈り込み、細かく土を耕す時に混ぜ込む有機方法。)を秋口に蒔き、大地を肥やしていた。
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時が限定されつつ手間隙かけたバイオダイナミック農法のブドウの苗木の植え付け作業であった。

イタリアは・・・トスカーナは(にしておこう)、暖冬。

3月8日のFesta della donnaフェスタ デッラ ドンナ(女子の日とでも呼ぼうか)の頃、Mimosaミモーザ(ミモザ。黄色い小さなボンボンの花がつく樹)が満開となり、季節を感じるはずなのに、1月にはあちらこちらで見かけられた。2月半ばの今、枯れがちのMimosa


ブドウの木は、12月に落葉が完了する。

地下の根がエネルギーを蓄え、地上の木は休眠する。(ブログ『ブドウの木の紅葉』にて。)

そんな12月の半ば頃から、ぼちぼちと剪定が始まる。

イタリア語で剪定をPotaturaポタトゥーラという。ブドウの木をViteヴィーテ、複数はVitiヴィーティという。

バイオダイナミック農法だとLuna Discendenteルーナ ディシェンデンテDSCN1902 picasa ld(28日間のサイクルをする回帰運動中、天体の赤道から見て月が秋分点側の約14日間)に剪定を行う。なぜなら、この期間は地下にエネルギーが集中するようで、地上で行われている剪定による傷の影響が少ないからだそうだ。

しかし、大きな農園では、1ヶ月中約2週間ポッキリの期間なぞ従ってはいられない。人間の予定でザックザック剪定していく。そして病気になったら薬で治す。経済のサイクルとでもいいたい。


ブドウの木も私たちの体のようにリンパが流れている。

木がカーブしたところや先端にリンパが溜まりやすいようで、元気な枝が生まれやすい。

全体を元気にさせるには、リンパの溜まりやすい所を、スムーズに通るようにしてあげる。

ブドウの木は、上へ上へ伸びる性質があるので、枝を支える3本のひもの一番下(H.6080cm)に合わせるように調整する。(この低い形は、トスカーナに多い形だそうだ。)

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昨年ブドウを実らせた枝、今年ブドウを実らせる枝、来年ブドウを実らせるだろうつぼみ、そして再来年ブドウを実らせるかもしれないつぼみを見定めていく。

私は、この過去・現在・未来を考えながら進めていく剪定は好きだ。どこか人生と似ているような。

弱ってきた木からヒョッコリ生まれてきた枝を親にして、長老を剪定する。


剪定は、常に枝を更新し、病気になりにくい位置や形に仕上げるためにする。

枝と枝が近過ぎると、枝・葉・実が込み合って、空気の通りが悪くなる。

一本の枝から2房実が成る。できたら一本の木には、8~10房の実が成るようにする。

しかし、どのつぼみからも芽が出るわけではではない。

芽が出てきたら、今度は間引き作業をして、実が育ちやすい環境をつくってあげるのである。


ブドウの木は、必ず接木をされた苗木を植えつける。根の部分からも次第に芽が出て成長してしまう。長い枝となり、本来のブドウの木の邪魔となる。それも私たちの手で切り除いていく。


生まれたての枝の間引き作業の時は、ポキポキと手で折れるほど柔らかいが、実をつけ一仕事終えた枝は固い。

スイス製のFelcoフェルコというメーカーのハサミでも、私の握力では長く続かない。手が痛くなる。

今回はラッキーにも電動のハサミをお借りすることができた。多少重いが、力を入れないで切れると、私の手は長続きする。

剪定で起こりやすい上腕腱鞘炎にも気を付けなくてはいけない。

そこでバイオダイナミック農法に従ってやると、Luna Ascendenteルーナ アシェンデンテ(前述のLuna Discendenteルーナ ディシェンデンテの反対で、月が春分点側の約14日間)では、別の作業となり腕が休まる。自然のサイクルで体も労わりたい。


春の陽気に近づく芽の出る23週間前、ブドウの木は、リンパの流動が活発となり、溢れんばかりの樹液が流れ出す。

これをPiantoピアント(植物の意は「樹液の滴」だが、「涙/泣くこと」が本来の意)とイタリア語で呼ぶ。

私もそんなことを知るまで、そんなタイミングに近づいて観察することもなかったが、剪定を習って身近となり観察してみると、本当に涙を流しているようにポタポタと垂れている。

春を喜んでいるような。


樹液の流動が活発となり、樹体が潤った頃、キュッキュッと滑らかなカーブをつくりながらひもに縛りつけ固定する作業が始まる。これをLegaturaレガトゥーラ(縛ること)という。

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